なぜスーパーのレイアウト変更はやめたほうがいい?客の流れが反時計回りだと損する?
しかし、この研究の説明によると、右利きの人が反時計回りに移動すると、右側(壁側)の陳列ばかりに注意が行きやすくなるのに対し、時計回りに移動すると右側(店の内側)だけでなく左側(壁側)も見るので、より多くの商品に注意が行きやすくなるのです。
なぜ時計回りでは壁側を見るようになるのかという疑問に対しては、壁には保護的な役割があるので、人間は安全性欲求から壁を確認する傾向にあるためと説明しています。レストランで食事をするときに、中央よりも壁側の席に座りたいと思うのも、この考え方で説明できます。時計回りのレイアウトは一考の余地があるかもしれません。
いずれにしてもメンタルマップを持っている買い物客は、入店するとこのマップを想起し、マップ上のどの売り場から買い物を始め、どこの通路を通ってどの売り場へ移動し、どの売り場を最後にどの辺りのレジで支払いを済ませるかといった、だいたいのルートをただちに決めます。当然、不要な売り場はそのルートから外されます。
ただし、店内が混雑していたり、特別な陳列やイベントがあったりすると、そのルートが調整されることもあります。初めて訪れる店ではこうしたメンタルマップが存在しないので、時間をかけて店内のあちこちを移動することになりますが、何回か利用するうちに形成されてきます。そうなると、その店での買い物という行為はその買い物客にとって効率性の高いものになるのです。
レイアウト変更の罠
スーパーは、商品の陳列場所を移動するという「レイアウト変更」をときどき行っています。しかし、それは買い物客にとってメンタルマップが使用できない不快な出来事になってしまう可能性が高いことに注意するべきです。スーパーでの買い物の多くは日常的な行為であり、関心が低く、ときには面倒に感じるものです。できるだけ時間と労力をかけずに終えたいと思っている買い物客はかなりいます。
普段から買い物している店舗のレイアウトが変更になったところで、新鮮さや新奇性が感じられることはほとんどありません。なぜなら、商品そのものが入れ替えられるのではなく、商品は変わらないまま売り場が移動するだけだからです。買い物客は、買いたいものをウロウロしながら探さなければならないことにイライラするだけなのです。