タクシー運転手が見た台風15号の混乱…「成田空港へ行かなければ」と叫んだ台湾人観光客
台風19号直撃の10月12日、倒木にゾッとする
台風19号が襲来した10月12日は、夕方〜夜に首都圏に上陸すると予想されていたため、朝から鉄道各社が計画運休を実施。昼すぎにはタクシー以外の交通機関は全てストップするという状況だった。
「この日は7時に会社を出発しましたが、とにかくヒマな日でした。午前中は短距離のお客様を何度か乗せただけ。10時30分くらいに港区の虎ノ門から羽田のホテルまで、欧米系の外国人のご夫婦をお送りしたのが最長距離でした。フライトがキャンセルになり、翌日の便になったため、早めに空港近くで待機することにしたということでした。
その後も短距離の方がちらほらという程度で、とにかく街に人通りがありません。駅が閉まっているので、長距離のお客様は狙えない。それどころか、そもそも人のいるところが見当たらないわけです。
唯一、人がいるのがホテルでしたので、そこを狙いました。台風でも宿泊客がいるので、ホテルは休めません。夕方に六本木のホテルから千葉県の浦安市のご自宅まで、ホテルのスタッフの方をお送りしましたが、運転自体ではそれほど風の影響を受けなかったものの、飛来物や倒木の直撃が怖かったですね。
皇居周辺の内堀通りは倒木が激しく、渋谷の宮益坂も倒木で通行止めに。同じく渋谷周辺の山手通りでお客様を降ろし、30分後くらいに同じところを通ったら、大きな木が倒れていて、タイミングが悪かったらと考えるとゾッとしました。売上も普段より大幅に少ない、4万5000円ほどでした」
【後編】では、台風襲来で考えた、タクシーという乗り物の“存在意義”について話を聞いていく。
(文=渡瀬基樹)
渡瀬基樹(わたせ・もとき)
1976年、静岡県生まれ。ゴルフ雑誌、自動車雑誌などを経て、現在はフリーの編集者・ライター。自動車、野球、マンガ評論、神社仏閣、温泉、高速道路のSA・PAなど雑多なジャンルを扱います。