作業的仕事の人は、かなり近い内に本当に不要になる ロボットのほうが断然マシな時代
国立情報学研究所が開発を進める人工知能(AI)が、大学入試センター試験の模擬試験で平均点を大きく上回る成績を達成した。このロボット、最終的には東京大学合格を目指しているそうで、その名も「東(とう)ロボくん」という。
このロボット、着実に偏差値を上げており、一昨年は45.1、昨年は47.3だったものが、今年は57.8をマークした。まだ東大合格には及ばないが、今年の成績では私立大の約8割と国公立大33校で「合格可能性80%以上」のA判定になったらしい。
ルーティン・ワークはほとんどなくなる
AIの進化のスピードを考えれば、センター試験で東大についてもA判定が出る日はそう遠くないのだろう。これは、相当程度のことがAIに取って代わられるということを意味している。
さらに追い打ちをかけるような話もある。英オックスフォード大学の研究者が、将来コンピュータやロボットに取って代わられる職種の確率を計算した。それによれば、経理・監査という仕事は94%の確率でコンピュータやロボットに取って代わられるという(C. B. Frey, M. A. Osborne, “The Future Of Employment”, Oxford University, 2013)。
それなりに苦労して東大に入り、会計士になった私としては、いずれのニュースも心穏やかな話ではない。ただ、東ロボくんが挑戦しているのは、択一式のセンター試験だ。東大の本試験は書かせる問題ばかりである。たとえば数学などは解答用紙としてB4版程度の白紙が6枚配られるだけだ。「何かを計算して答えを書きなさい」というような問題は本試験にはまず出ない。そこでは論理的な記述が求められており、正解も何通りかあり得る。東ロボくんもさすがにそれには答えられないだろう。
オックスフォード大学の研究における「経理・監査」も、会計情報を集計・作成し、それをチェックする仕事だ。同じ会計の仕事でも、集計された会計データを元に分析し意思決定するような、いわゆる管理会計的な業務までは含んでいないだろう。
決まった正解のない非定型的な業務は、コンピュータは苦手だ。しかし逆にいえば、非定型的な業務以外のほとんどの業務、ルーティン・ワークに属すような業務のほとんどは、ロボットやAIに取って代わられる可能性が高いということだ。
脱時間給制は必然的な流れ
東ロボくんのような最近のニュースを聞くにつれ、政府が進める「脱時間給」制度、いわゆるホワイトカラー・エグゼンプションは、好むと好まざるとにかかわらず、もはや必然的な流れだと思うのだ。時間で対価を測れるような“作業”は、そのほとんどがロボットやAIに取って代わられるからだ。