2000年代に入ってから、米国のITバブル(IT関連企業の株価高騰)の中で一時はソニーの業績期待が高まる場面はあった。しかし、ソニーは事業を多角化しつつも持続的な成長を実現するまでには至らなかった。反対に業績は悪化傾向をたどった。
この結果、2003年4月に“ソニーショック”が起きた。同社の業績が大幅に悪化し、市場参加者に衝撃を与えてしまったのである。リーマンショック後も、同社への成長期待は盛り上がりづらい状況が続いた。
CMOSイメージセンサー事業の重要性
2012年以降、ソニーは自社の強みを取り戻すべく改革に取り組んだ。主な目的は、新しい技術やテクノロジーの創出の力を高めることにあったと考えられる。その中で、ソニーがCMOSイメージセンサー事業に経営資源を再配分してきたことは重要だ。この市場において、ソニーは世界の約半分のシェアを手中におさめている。今後もCMOSイメージセンサーの需要は拡大基調となることが予想される。
それを支える一つの要素に、5G通信がある。5G通信が普及するとともに、世界全体で通信速度が高まる。ネット上では、SNSを中心により多くの人が高画質かつ大量の画像などを送受信するようになるだろう。このニーズに対応するため、スマートフォンに搭載されるカメラ数が増えている。すでに中国のファーウェイは5Gに対応した新型機種に4つのカメラ(クアッドカメラ)を搭載している。
さらに5Gの普及に伴い、モノのインターネット化(IoT)への取り組みも加速するだろう。人工知能(AI)を私たちの“脳”にたとえるとすれば、CMOSイメージセンサーは“眼”に位置付けることができる。企業の生産現場をはじめ、家庭でもAIを搭載したIoTデバイスが浸透しつつある。さらに、自動車の自動ブレーキの普及、さらには自動運転テクノロジーの開発にも高性能の画像処理センサーが欠かせない。高齢者の見守りや、治安維持のためにも、高機能の画像処理センサー需要は高まるだろう。
AIやCMOSイメージセンサーを用いることによって、私たちはリアルな世界(身の回りで起きている現象)を、より細かく、よりダイナミックにとらえることができるようになると期待される。実際に起きていることを、私たちが認知する以上により細かくとらえることができれば、人々はよりよい生活を手に入れることができるだろう。ソニーがCMOSイメージセンサー分野での競争力を高めてきたことは、今後のネットワークテクノロジーの加速化とその実用化に対応し、収益を得ていくために重要だ。