ここへきて原点回帰を進めるソニー
ソニー経営陣がCMOSイメージセンサー事業の強化を重視していることは、同社が新しいモノの創出を通して需要を生み出すという原点をしっかりと認識し、その力を高めようとしていることといえる。すでに、その経営方針は成果を上げてきた。本年4~9月期、ソニーの連結営業利益は5098億円となり、前年同期から17%増えた。上半期の業績としては3期続けての過去最高益だ。
昨年来、米中の貿易摩擦の激化などを受けて世界経済の先行き不透明感は増している。この環境下、ソニーでは、CMOSイメージセンサーに加え、映画、音楽などの分野でも収益が獲得され業績が拡大している。ソニーはリーマンショック後のように金融ビジネスに依存した収益体質を改め、自社の強みを認識しなおすことを通して、分散された、持続性ある事業体制を整えることができつつあるといえるだろう。
今後、ソニーに期待したいことは、自社の強みであるテクノロジーの創出力を高め、他企業にまねできないプロダクトを生み出し続けることだ。そのためには、研究開発を含め、同社が連続的かつより迅速に、新しい発想の実用化を目指すことが欠かせない。それが、ソニー流のモノづくりといえる。
経営陣はこの点を冷静に理解していると考えられる。ソニーがコングロマリットの経営を見直すことは容易ではない。それにはあまりに多くの負担が伴うだろう。半導体事業の分離は、ソニーが本来の強みを見失うことにもなりかねない。
利害関係者の納得を得るために、ソニーはさらに先端分野での研究開発体制を強化し、新しいテクノロジーやモノの創出に取り組み、さらなる成果を上げる必要がある。すでに中国経済の減速は鮮明化し、成長率を高めることは限界を迎えている。先行きの不確定要素が徐々に増える中、ソニーが人々の生き方を変えるほどのマグニチュードを持つソフトウェアなどを生み出し、さらにはプロダクトへの実装を通して新しい需要を創出することができるか否かが注目される。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)