ロッテグループのお家騒動が泥沼化している。
創業者の重光武雄氏の長男、宏之氏が日本のロッテホールディングス(HD)を、次男の昭夫氏が韓国のロッテを統括するという分担体制が崩れ始めたのは今年1月のことだった。ガムやチョコレートなどの製造・販売が中心の日本事業を統括していた宏之氏が、ロッテHD副会長のポストを解任され、昭夫氏が日韓両方を見る体制になった。
第2ラウンドは7月。宏之氏は武雄氏を伴って来日し、昭夫氏を解任しようと動いたが、返り討ちに遭う。昭夫氏はロッテHDの取締役会で武雄氏の代表権を外し、名誉会長に棚上げする人事を決めた。そして8月の臨時株主総会を経て、昭夫氏を中心とする経営体制が確立した。ロッテHDを支配下に置いたことで、昭夫氏は日韓にまたがるロッテグループのトップの座に就いたのだ。
だが、これにて一件落着とはいかなかった。10月、宏之氏が反撃を開始。武雄氏が不当にロッテHDの会長職を解任されたとして、解任無効の訴訟を日本で起こした。これに続き、宏之氏は自身が役職を解任されたことで損害が生じたとして、ロッテHDの佃孝之社長とロッテグループ4社に対する損害賠償請求訴訟を東京地裁に起こした。宏之氏は11月24日、「ロッテの経営正常化を求める会」を発足させ代表に就いた。
武雄氏は、韓国内のグループ7社の経営陣を業務妨害で韓国検察に刑事告訴した。聨合ニュースは「ロッテショッピングやロッテ物産の経営陣が中国での事業失敗に伴う損失を実際より少なく武雄氏に報告したため、捜査を求めた」としている。
その武雄氏はさらに12月、昭夫氏や佃氏ら3人を業務妨害などの容疑でソウル中央地検に告訴した。武雄氏の代理人によると、3人は2014年8月から今年7月にかけて、宏之氏の投資をめぐり「虚偽の報告を繰り返して事実誤認をさせ」、武雄氏に宏之氏の役職解任を同意させたほか、武雄氏も代表取締役から解任して業務を妨害などしたとしている。
宏之氏の反撃
韓国メディアは、勝負のカギを握るのは光潤社だとしている。日本のロッテHDの28.1%を保有する事実上の持ち株会社である。光潤社は韓国ロッテグループの持ち株会社であるロッテホテルの最大株主でもある。
光潤社の経営権を握った者がロッテグループの頂点に立つため、光潤社を誰が支配下に置くかが注目を集めていた。宏之氏は光潤社の臨時株主総会を要求し、10月14日に東京都内で株主総会と取締役会が開かれた。宏之氏は昭夫氏を韓国ロッテグループ会長から解任するとともに、武雄氏の持ち株を譲り受け光潤社株式の過半数を握ることに成功した。総会後、取締役会を開き宏之氏をCEO(最高経営責任者)に指名した。