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ルディー和子「マーケティングの深層と真相」(12月27日)

ユニクロ、ヒートテック依存商法の限界…悲願の「強いファッション性」を断念か

文=ルディー和子/マーケティング評論家、立命館大学教授

 本連載前回記事では、サンリオのキャラクター、ハローキティのブランド個性があいまいになり、ひいてはブランド価値が落ちているという状況をみてきた。続いて今回はユニクロについてみていきたい。

 ユニクロというブランドは、ファッション衣料品というよりは、どこかトヨタ自動車を連想させる。機能性、品質管理、カイゼンといった言葉を思い出させる製造業的イメージがあるブランドなのだ。これは、けなしているのではなく、褒めているつもりだ。

「製造業的イメージを持つアパレル商品」というのは、世界にたったひとつだろう。ユニクロは、誰もが買える「普及価格」で品質の良い自動車や電機製品を世界に提供した、かつての日本企業を思い出せるアパレルブランドだ。

 そういった意味で今、ユニクロが日本の電機メーカーが経てきたのと似た道をたどっているように見えるのは、当然のことなのかもしれない。

ユニクロ、ヒートテック依存商法の限界…悲願の「強いファッション性」を断念かの画像2『合理的なのに愚かな戦略』(ルディー和子/日本実業出版社)

 たとえば、ヒートテックが登場したときは画期的であったが、機能的製品なのだからマネはできる。競合他社が模倣品を出す。ユニクロは、それよりもっと機能的に優れた製品をつくろうと、絶え間ないカイゼンをする。だが、品質はすでに消費者には見分けのつかないレベルとなっている。

 ソニーやパナソニックのオーディオ・ビジュアル(AV)製品に関する2000年頃の調査では、その品質の良さは世界の消費者には違いがわからないレベルになっていることが明らかにされた。それでも、日本のメーカーはカイゼンを続けたが、デザイン性に長けた英ダイソンや、安価な新興国メーカーの製品に負けた。

 ユニクロがインディテックスやH&Mの売り上げを抜くには、ファッション性が必要だといわれる。だが、それはどうだろうか。ユニクロは、ジル・サンダーやクリストフ・ルメールといった著名デザイナーがデザインした服を販売したが、PR的な話題づくりは提供できても、それがユニクロにファッショナブルなイメージを与えたわけではない。

 ユニクロはファッション性を取り入れようと、さまざまな努力をしているが、これまでのところ成功していないのだ。

徹底的に機能性を追及するほうがよい?

「ブランドパーソナリティ」という用語がある。ブランドアイデンティティ、ブランドパーソナリティなど、似たような意味を持つカタカナ用語を微妙な違いで使いわけるのは、筆者はあまり好きではないが、この場合においては、ブランドパーソナリティ(=性格)という言葉を使うと、言いたいことがわかりやすく説明できるので、あえて使ってみる。

ルディー和子/マーケティング評論家

ルディー和子/マーケティング評論家

早稲田大学商学学術院客員教授。
国際基督教大学卒業後、結婚・渡米を経て帰国、
米化粧品会社のエスティ ローダー社で働きながら
上智大学国際部大学院経営経済修士課程修了。
エスティ ローダー社ではマーケティングマネジャー、
出版社タイム・インク/タイムライフブックス社での
ダイレクトマーケティング本部長を経て、
マーケティング・コンサルタントとして独立、
自身の会社ウィトン・アクトンを設立
ルディー和子オフィシャルブログ

Twitter:@shouhigaku

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