サマンサタバサジャパンリミテッドへの出資により両社に高いシナジー効果ができると判断した――。
これは今年9月2日、紳士服チェーン国内3位のコナカが、女性向けバッグブランドなどを手掛けるサマンサの株式31%を取得し、持ち分法適用関連会社化した際に発表した文言だ。
コナカの属する紳士服業界は“スーツ離れ”のあおりを受け、業界全体が縮小気味。コナカも2018年10月1日から19年9月30日までの連結売上高は606億9800万円(前年同期比6.8%減)、営業利益は7300万円(91.9%減)と惨憺たるもの。
そして、シナジーを期待するサマンサは、ミランダ・カーやヴィクトリア・ベッカムなど海外セレブを起用する広告手法が当たり、15年2月期は営業利益約33億円を計上していたが、翌年からは潮目が変わり、20年2月期第2四半期決算の営業利益は2億8800万円の赤字(前年同期は5億3000万円の黒字)へ転落した。
両社は現在、業績悪化にあえいでおり、今回のグループ化に首をかしげる人も少なくない。
実は似た者同士? 両社はどちらもエントリーブランド
そもそも大衆向けスーツを取り扱うコナカと、若い女性向けハンドバッグをメインとするサマンサでは、同じファッション業界に属する企業といえど、メインで扱う商品もターゲット層も大きく違うことは誰の目にも明らか。
そこでファッション業界内の専門家の見解を伺うべく、今回はスタイリスト・佐野旬氏に両社の思惑などを解説してもらった。
「サマンサは、ブランドポジションとしてはコンサバ(conservative=控えめ)系、昔でいうところの赤文字系ファッション誌の系統に位置していて、フォーマルというよりはアフター5の合コンなどで男性ウケするようなデザインのバッグが主力。実際のターゲット層は10代後半~20代前半の女子大生や若いOLで、価格帯は決して安くはないものの手頃感がある。どちらかといえばオシャレ初心者向けのブランドです。
対するコナカは気軽にリーズナブルなスーツが購入できるチェーン店。つまり、サマンサとコナカは活用シーンのオン・オフの違いなどはあれど、初心者などにも敷居が低いエントリーブランドという意味では似ている部分もあるんです」(佐野氏)