人手不足に伴う人件費の高騰で、コンビニエンスストアの24時間営業というビジネスモデルが崩れようとしている。
ファミリーマートは営業時間の短縮(時短)営業を原則容認する方針に転換した。午後11時から午前7時までの間に、店を閉める時間を設定。毎日短縮するのか日曜日だけとするのかなども含めて、約1万6000店ある加盟店のほぼ全店が営業時間を選択できるようにする。来年3月以降の移行を順次認めていく。時短を望む店主とは事前に話し合ったうえで、判断は委ねる。本部の同意は条件としない。
「たとえ本部の合意がなくても、どうしてもやりたいなら店主の意向にあわせる」(澤田貴司社長)
ファミマが時短営業の容認に踏み切ったのは、今年6月に加盟店向けアンケートの結果が大きかった。1万6000店のうち半数近い7000店が「時短営業を検討したい」と回答した。
「あまりの多さにファミマ幹部に衝撃が走った」(関係者)。
加盟店のオーナーの意識は明らかに変化している。これまで圧倒的な力で加盟店を支配してきた本部が、変わらざるを得なくなったということだ。背景には「市場の飽和」や「人手不足」がある。「ものすごい環境の変化が起きている。一刻も早く実行しなければならない」(澤田社長)と決断した。
コンビニ大手3社は人手不足に対応するため時短を進めているが、3社の取り組みには温度差がある。ローソンとファミマが加盟店の申し出や判断で時短が可能になるのに対し、最大手のセブン-イレブン・ジャパンは本部と加盟店両者の合意が必要となっている。主導権は本部が握っており、実際に深夜に休業しているのは、現時点ではわずか8店舗としている。
セブンが消極的なのは、「2社に比べ夜間の売り上げが多く、深夜休業への業績への影響が大きいから」(セブン関係者)だ。大阪府の加盟店が本部の了解を得ずに時短営業を始めた際、本部は契約解除をちらつかせ、強硬な姿勢を示したため社会問題へと発展した。コンビニ業界で「働き方改革」が浸透するかどうかは、セブン本部の出方次第という側面が強い。
「休暇は27年間で1度もない」店主も
日本のコンビニの元祖であるセブンは1974年5月、東京都・江東区に第1号店の豊洲店を開業した。店名のように朝の7時から夜の11時まで営業する店だった。24時間営業もセブンが嚆矢。75年、福島県郡山市の店が24時間営業を始めた。豊洲店と郡山市の虎丸店はコンビニの歴史に必ず登場する店だ。