業績低調の理由だが、スーツ業界自体が先細りのコナカはわかるものの、サマンサタバサはつい数年前まで業績は好調だった。経営の多角化や主力であるバッグのターゲット層を拡大したせいなど、マーケティング戦略の不備を指摘する声もあるが、アパレル業界内からの目線で分析するとどうなのだろうか。
「サマンサは今、単純に流行りではないんだと思います。最近ではリュックを使っている女性も多くなっているし、いわゆる赤文字系というもの自体が廃れ気味ですからね。それに、サマンサベガといった別ラインのバッグブランドも多数展開していますが、世の中的にはコンセプトの違いをわかっている人は少なく、どれも不振なのも響いていそうですね」(佐野氏)
コナカは女性客、サマンサはビジネス客
ではコナカによるところの“シナジー”は、どんな面から期待できるかが気になるところ。
「正直、ファッションブランド同士のグループ化は珍しい話ではなく、シナジーなどは起きずに、何も変わらない可能性も大いにあります。ですが両社とも、新たな客層を取り込みたいという思惑はあるのだと思います。
男性はプライベートではバッグに無頓着な傾向がありますが、ビジネスパーソンであればビジネスバッグくらいは購入するでしょう。ですから、サマンサタバサが手掛けるメンズ用ビジネスバッグをコナカが展開できれば、その受け皿となり得るはず。一方のサマンサも売上は頭打ちですし、これからルイ・ヴィトンやエルメスのようなハイエンドポジションに加わることはほぼ不可能でしょうから、コナカの畑であるビジネスシーンという新しいエリアを開拓したいと考えているかもしれません。それに、コナカの規模で商品が展開できれば、商品の大量生産によりコストダウンが図れるというメリットも期待しているのかもしれません」(佐野氏)
コナカはかねてよりCMで若い女性タレントを起用している。これも今回の提携の伏線ともいえるのではないだろうか。
「そういった思惑もあるでしょう。女性は潜在的に男性よりもファッションが好きなもの。となると、父親世代が買いに行くようなコナカなどのチェーン店で、スーツを買い揃えるのは抵抗があるはずです。ですが、そこにサマンサがデザインを手掛けるスーツが置いてあったら、若い女性がコナカに足を運ぶハードルも、多少は下がるでしょう。もしスーツもサマンサのノウハウから女性向けの裏地やシルエットで売り出すことができれば、需要は高まるかもしれません」(佐野氏)
現時点では、コナカの言うシナジー効果が何を意図するかは明確にはわからない。しかしこの提携がうまくいけば、業績が悪い企業同士が手を取り合って、現状を打破しようとする動きがトレンドとなっていくかもしれない。
(取材・文=A4studio)