PGMは12年11月15日、アコーディア株1株を8万1000円で取得する公開買い付け(TOB)を発表した。これに対して、アコーディア側は対抗手段として、配当予想を1株当たり1600円から5500円に引き上げ、連結配当性向90%をメドとする経営の基本方針を打ち出した。
さらに、アコーディアは今年1月4日、PGMによるTOBの成立を条件として、経営統合など組織再編行為を行う場合に必要な株主総会の決議要件を現在の出席株主数の議決権の3分の2以上から4分の3以上に引き上げるための臨時株主総会を開催すると発表した。
こうした両社の攻防の中、TOB期間の終盤になって、“予想外の伏兵”が現れた。村上ファンドとして一世を風靡した村上世彰氏の関係者が代表を務める投資会社「レノ」が、アコーディアの大株主として登場したのである。
かつて、「密室の交渉(=インサイダー)」で“尊師村上”が逮捕された轍を踏まぬように、レノは奇想天外な手段に出た。大量保有報告書の添付資料として、アコーディアに対して、「公開質問状」を突き付け、回答の公表を求めた。
この質問状に対して、アコーディアは
(1)PGMとの経営統合は、内容・条件等が株主の最善の利益に資するものであれば、検討を行う必要があると考えている
(2)自社株取得は株主還元の有力な選択肢の一つと認識している
と回答した。
そして、問題のTOB期間の最終日1月17日を迎える。この日、午後0時16分、米有力通信社ブルームバーグから「アコーディアが国内に保有する10のゴルフ場を売却し、調達した150億円規模の資金を自社株買いの原資に充てる方針」との記事が配信された。
この直後からアコーディア株は急騰し、PGMの提示したTOB価格8万1000円を上回る8万3800円まで上昇する。結局、この日はTOB価格を上回る株価で取引を終了、PGMによるアコーディアのTOBは失敗に終わった。
しかし翌18日、PGMの神田有宏社長は、ブルームバーグの報道前の時点では、TOBに参加するために口座を移管してTOB申し込みの準備をしていたアコーディアの株数が20%を超えていたにもかかわらず、報道の影響もあってキャンセルが相次ぎ、TOBが失敗に終わった可能性があることを指摘。
加えて、PGMはこのブルームバーグの報道が、「アコーディアまたはその関係者が、TOBの成立を妨げる目的で、アコーディアの株価をTOB価格以上につり上げるために、意図的にブルームバーグにリークした疑いが濃厚である」として、金融商品取引法の不正行為の禁止、風説の流布の禁止、表示による相場操縦の禁止に違反する可能性を指摘、証券取引等監視委員会に調査を依頼、同委員会はこの問題に関する調査に着手した。
PGMによるTOBが成立しなかったことから、アコーディアの臨時株主総会は開催されない。となれば、6月の定時株主総会は再び荒れることが予想される。
レノの質問に答えて、PGMとの経営統合の検討を排除しなかったアコーディアは、実際にPGMから検討を持ちかけられた場合に、どのように対処するのか。
20%以上のアコーディア株を保有するレノは、株主総会に向け、どのような要求を突き付けてくるのか。また、どうやって満足するだけの株式売却益を手に入れ、アコーディアへの投資から撤退するのか。
PGMが主張しTOB妨害疑惑が持たれているブルムーバーグ報道に対する、証券監視委による調査はどのような進展を見せるのか。
アコーディアとPGMの経営統合をめぐる問題は、今後も色々な話題を振りまいてくれそうだ。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)