日清食品の「カップヌードル」のテレビCM放送が開始から1週間ほどで中止になったことが話題になっている。このような問題が起こった際、当事者の企業はどうすればよいのかを、著者が日頃感じている消費者感覚を踏まえ考察したい。
CM放送中止を受けて、「日清がんばれ」「ネットのクレーマーに負けるな」「批判を恐れるな」「言論の自由だ。表現の自由だ」「寛容さがなくなった」といった日清食品にクレームをつけた人を悪者扱いするコメントが目につく。「あのCMはよかった」「中止しなくてもよかった」「続けるべきだった」という意見が多く、「中止して当然だ」という声は表立っては出てきていない。
というより、マスコミの間で「あのCMは不愉快だった」と言わせない雰囲気があるように思えてならない。そんなことを言ったら、それこそ集中砲火を浴びて炎上してしまうだろう。
しかし、それが本当に消費者を代表する声なのだろうか、そして日清食品を応援していることになるのだろうか。表現の自由があるので、誰が何を言おうと構わないが、消費者を相手にしている企業がこうした声だけを頼って進んでいくと、思わぬ落とし穴にはまる危険性がある。
閉鎖的になるマスコミ
CMを製作したのは、日本を代表する大手食品会社の日清食品で、主演は大物タレントで世界的映画監督でもあるビートたけしさんだ。そんなCMに対し、「クレームがつくに決まっているじゃないか」「不倫した人を応援しているように見える」「『不倫をしても大丈夫、皆で応援してやるよ』って見られちゃいますよ」とは、匿名でもない限り口が裂けても言えないだろう。CMを批判することは、日清食品だけでなく出演者を批判することにもなる。日清食品やたけしさんに不愉快な思いをさせる発言は、なかなか言えるものではない。
昨今、「インターネットで批判する人たちを批判する」発言をするタレントが多くなっている。個人的にはそうした意見に賛成のときもあるが、全体的な風潮として「文句ばかり言うな」「批判したいだけだろう」「匿名で批判する者は悪」といった主旨のものが多く、「匿名批判者を批判するのが正義」というような雰囲気がつくられつつある。「批判ばかりするな」と批判する人ばかりが、マスコミで重宝がられている気がしてならない。