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垣田達哉「もうダマされない」

CM中止騒動、日清食品擁護は危険…匿名の批判を批判して悦に入る風潮の致命的落とし穴

文=垣田達哉/消費者問題研究所代表

 テレビを中心とするマスコミ全体が「批判するなという批判ばかり」になってしまい、マスコミ全体で、批判を封じ込めようとしている。つまり、「あのCMは不愉快だ」と言えない雰囲気がある。言論の自由という点では、マスコミ全体が自分たちで非常に閉鎖的な世界をつくり上げようとしている。ネットとマスコミの世界を比較し、一体どちらが「寛容さがないか」は明白だろう。

本当のクレームが届かなくなった企業は不幸

 消費者を相手にする企業にとっては、こうした風潮をつくり上げられるのは、けっして喜ばしいことではない。なぜなら、消費者の本当の声が聞けなくなってしまうからだ。

「匿名のクレーマーの批判は、単なる言いがかりにすぎない」という主張はもっともらしいが、だからといって「そんな消費者(クレーム)は無視すればよい」かどうかは、企業にとっては難しいところだ。企業にとっては、そんなに簡単には割り切れない。

 著者は、事業者向けの講演も多いが、食の安全や不祥事に関係して危機管理の話をするときには、「消費者からのクレームを、最初からクレーマー(言いがかり)だと思ってはいけない」とアドバイスしている。
 
 たとえ、結果的に1000件中999件がクレーマーだったとしても、最初からクレーマーだと思って対処すると、企業にとって大事な情報を見落としてしまうことがあるからだ。消費者を相手にする企業は、「クレームには真摯に向き合う」ことが大原則だ。

 最近は「匿名の批判は悪」とする傾向が強くなってきている。特に、著名人や芸能界の大物たちが言えば言うほど、本当に不愉快だと思った消費者は萎縮してしまい、クレームを言わなくなってしまう。

 食品への異物混入が話題になったときも、時間が経つにつれ「消費者が神経質すぎる」という風潮が強くなったことで、「異物混入があっても、何か文句つけているみたいで言うのが嫌になった」という声を聞くようになった。

 本当のクレームが届かなくなった企業は不幸である。耳触りのよい声ばかりが届いて悪い声が届かなくなる。“本当のクレームの1件”が届かなくなると、企業にとって致命的なことが起きる可能性が高まる。
(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

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