新型コロナウイルスの感染防止のための臨時休校を受け、仕事を休んだ保護者に賃金を全額支払った企業などを対象にした新たな助成金について、厚生労働省は18日から申請の受け付けを始めた。2月27日から3月31日の期間で、仕事を休んだ日が対象になる。助成金は企業に雇われた保護者が休校の影響で仕事を休んだ場合、1人日額上限8330円を企業に支払う。フリーランスには、その約半分の日額4100円を一律に助成する。ここで気になるのがフリーランスへの助成金に対する課税だ。月給制の会社員とは違い、フリーランスは個人事業者にあたる。雇用者への休職補償と、フリーランスの休業補償では法律的な扱いが異なってくる。つまり、4100円を受け取ってもその一部は税金に取られる可能性があるのだ。
所得税法では非課税対象の厳密な規定がある
所得税法9条では、非課税所得は原則として例外規定に定められたもののみが非課税になるとしている。具体的には以下が対象だ。
1. 障害者等の税負担の軽減及び貯蓄奨励策に基づくもの
2.給与所得者の出張旅費や転勤旅費などの実費弁償
3.社会政策的配慮(担税力)に基づくもの
あ)増加恩給、傷病賜金、負傷又は疾病に基因して受ける特定の給付、遺族恩給、遺族年金等
い)学費に充てるため等に給付される金品
う)心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して受ける損害保険金、損害賠償金、見舞金等
え)雇用保険、健康保険、国民健康保険の保険給付等
お)生活保護のための給付
4.公益的な目的に基づくもの
文化功労者年金、学術又は芸術奨励として交付される金品(例:朝日学術奨励金)、ノーベル賞として交付される金品
5.二重課税の防止に基づくもの
相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの
6.オリンピック競技大会又はパラリンピック競技大会における成績優秀者を表彰するものとして交付される金品
今回の助成金は、その性質上、「3.社会政策的配慮に基づくもの」と考えられる。しかしこの項目にも、規定が設けられている。う)の見舞い金などが意味合いとしてはもっとも近いが、今回の支給対象者は新型コロナウイルスに必ずしも感染しているわけではない。あくまで学校が休校になり、子どもの世話をする必要があるので仕事を休まざるを得ないのが理由だ。
厚労省「雑所得で例外規定には当たりません」→課税対象だった
国税庁の広報担当者は「あくまで原則論」と断った上で、次のように説明した。
「企業に雇用されている労働者の休業補償とは違い、フリーランスの方は個人事業者という扱いになります。そのため1個人の事業者に支払われる助成金が、そのまま当人の給与となる場合、現行の所得税法を厳密に適用すれば課税対象になります。
大規模災害などで実際に所有している資産などが直接被害を受けてマイナスになった場合に見舞金などは支払われます。つまり災害によるマイナス分を原状回復させるという意味で支給されているのです。一方で今回のフリーランスの場合は、『何もなければプラスだった』部分に支給される助成金です。そのため例外規定にあたらなくなってしまうのです。
ただこれはあくまでも原則論で、厚生労働省で今回の助成金が非課税になるよう明確な制度設計がなされている可能性もあります。現段階で国税庁では今回の助成がどのような根拠法にもとづくのか把握していません。今回のタイミングでの助成は、来年度の申告になるので、政府でなんらかの措置が取られる可能性もあります」
実際、どのような制度設計がなされているのか。厚生労働省雇用環境・均等局の担当者は次のように説明する。
「この助成金は雑所得にあたり、所得税法9条の例外規定には当たりません。フリーランスの方々は、毎年確定申告をされています。その際に申告していただくかたちになります。日数などで税額に差はあると思われますが、それほど大きなご負担にはならないと考えています」
今回の助成金に関して言えば、フリーランスと会社員の間で支給額に大きな隔たりがあることが物議を醸してきた。今回の措置が職業格差を深める新たな要因にならなければ良いのだが。
(文=編集部)