「モンスター客」という言葉が使われるようになって久しい。
明らかに理不尽な要求をしたり、店側の不備に対して過剰な見返りを求める客を指す言葉だが、その「モンスター」と最も接する機会が多いのは何といっても「コンビニ」だろう。大阪府茨木市のファミリーマートにやってきた客が店長らを土下座させた一件は記憶に新しい。
現役コンビニ店長の三宮貞雄さんの著書『コンビニ店長の残酷日記』(小学館刊)は、コンビニ経営の実態やそこに集まる客、そして従業員のありのままの姿をつづった一冊。
そこには「モンスター客」あり、わがまま客あり、強盗ありの刺激に富んだコンビニの日常が垣間見える。
たばこ1箱でライターを要求するツワモノ
喫煙者ならおわかりだろうが、コンビニではタバコをカートンで買うとライターが一つついてくるキャンペーンをよく行う。
もちろん一年中やっているわけではないため、カートン買いしてもライターをもらえないこともあるのだが、「あれ、ライターはくれないの?」と言ってくる客はまだかわいい。カートンでなく一箱買っただけなのに当たり前のようにライターを求めてくる客もいるという。
そして「モンスター客」はやってくる
コンビニには買い物かごが常備してあることが多いが、中にはそれを使わずにたくさんの商品を両手に抱えてレジにくる客もいる。
そうなると店内で商品を落として破損するということも出てくる。客が買い取るのが筋だが、「お代を頂戴しないと、私が買わないといけないんですよ」と言った三宮氏に「じゃあ、そうすればいいじゃん」と言い放つ客も。こういう客は「モンスター」と呼んでしかるべきだろう。
もはや無法地帯!? コンビニ駐車場に集う人々
ある日、三宮さんが店の入り口脇の車止めにずっと座っている若者に気づき、「何をしているの?」と聞いたら、看板の電源を抜いてスマホを充電していたという。
これだけでもかなりのトンデモだが、中には店の外の水道に自前のホースをつないで堂々と洗車を始める客もいたという。
強盗に勧誘、深夜は珍客だらけ
ただでさえ雑多な人が集まるコンビニだけに、深夜ともなるとさまざまな「珍客」が訪れる。
三宮さんが夜勤中に出会ったなかで特に風変わりなのが「フリーメイソン」(16世紀後半から続く、謎の多い友愛結社)の会員と自称する男。1時間にわたってフリーメイソンの成り立ちや素晴らしさを語り、挙句のはてには三宮さんを勧誘する始末。その男はすべて話し終えると満足して帰って行ったという。
ちなみに、その男の後に入ってきたのは強盗だったそうだ。かくもバラエティに富んだ深夜のコンビニである。
コンビニの表の話も裏の話も、三宮さんは本書のなかでかなりの部分をさらけ出している。思えば、コンビニ程多様な人々が集まり、すれ違っていく場所も珍しい。
どんな社会階層の人々をも受け入れるこの懐の深さ。コンビニは現代の「人間関係の十字路」なのかもしれない。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。