ランドセル、なぜ平均4万円でも抵抗なく買う?なぜ、もやし一袋百円でも高いと感じる?
アベノミクスによる景気回復が伝えられているが、2015年の2人以上の世帯の消費支出(総務省発表の家計調査)は月平均28万7373円、実質ベースで対前年比2.3%減と2年連続のマイナスになるなど、消費者の肌感覚としては依然として景気は厳しいというのが実情だろう。
しかし、日本鞄協会ランドセル工業会などによると、新入生がほとんどもれなく購入する小学校のランドセルの平均価格は約4万2000円と、1970年の約6000円から7倍ほどに上昇しており、高級化が顕著になっている。
このように、価格が高止まりしている商品やサービスがある一方、牛丼チェーン店など低価格競争が過熱する商品・サービス群も存在する。そこで、立教大学経営学部教授の有馬賢治氏に、こうしたカテゴリ別の価格トレンドの違いがなぜ生まれるのか話を聞いた。
「値ごろ感」を各自の「参照価格」で比較
「世の中に出回る商品には、その各々が持つ特徴に応じて異なる『値ごろ感』というものが存在します。たとえば、スーパーやコンビニで買う日常の消耗品などは購買間隔が短く、安くないと“買いたくない商品群”に入ります。反対に、ランドセルを含めた耐久品、奢侈品、大切な人への贈答品などは購買間隔が長く、“高くてもお金を惜しまない商品群”と考えることができます」(有馬氏)
購買間隔が短くても、自分が情熱をそそいでいる趣味に関するものなど、プレミア化していても購入するものも後者の商品群に含まれる。
「このように、消費者には買おうと思う商品の値ごろ感を推測する複数の『(内的)参照価格』というものが存在します。たとえば、スーパーで卵のパックが100円であれば安いと感じ、もやし一袋が100円であれば高いと感じる、というように、価格が同じでも商品によって値ごろ感は違います。消費者が高いと思うか安いと思うかは、自己の購買経験や蓄積された情報などから無意識的に割り出した『参照価格』と比較して判断しているのです。そして、それが自分にとって適正だと思えば、そこで初めて購入するのです」(同)
ランドセルなどは、過去の購買経験や情報が日常の消耗品に比べて極端に少ないため、「そういうものか」と割り切ったり、「一生に一度だから」という強い思い入れからの判断で購買されるため、ある程度高額化した価格設定でも市場は成り立っている、と考えることができる。また、両親の世代ではなく祖父母の世代が「かわいい孫のために」と奮発して買い与えることも最近は多いようだ。