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有馬賢治「日本を読み解くマーケティング・パースペクティブ」

ランドセル、なぜ平均4万円でも抵抗なく買う?なぜ、もやし一袋百円でも高いと感じる?

解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=A4studio

「値ごろ感は、単純に商品ごとに存在するわけではありません。カフェチェーンでは一杯のコーヒーにそこまで高いお金を払いたくはありませんが、東京・銀座のコーヒー専門店であれば1杯1000円でも『仕方がないか』という心理が働きます。値ごろ感は、こういった立地の影響にも左右されます。消費者は、各自の多様な経験によって参照価格を形成しているのです」(同)

 消費者が直面した場面で値ごろ感は想起されるので、たとえば旅行先で財布のひもが緩むなど特別感が増せば増すほど「参照価格」は曖昧になってくるもの、とみてよさそうだ。

ドン・キホーテと大手家電量販店が共存できるワケ

「さらに家電で考えた場合、ヤマダ電機やビックカメラなどで主要に取り扱われている国内大手メーカーの商品もあれば、ドン・キホーテの家電コーナーで見られるあまり聞いたことのないメーカー品で価格が安い商品もありますよね。家庭を持っていてある程度収入のある消費者は、質がよく長持ちをする大手メーカー品を買って『安物買いの銭失い』が起こらないような配慮もするでしょう。一方、引越しが多い単身者や学生ならば、数年間使えればよいという割り切りから、とりあえず安さを優先する人も多いでしょう。競合商品同士でも、置かれた状況によっては人それぞれに値ごろ感が変わってきますので、これら2つの価格帯の共存も成り立っているわけです」(同)

 安全性への危惧から、食品や中古車などでは「安すぎる」と却って買うのをためらってしまうものもある。人それぞれものに対する参照価格は違うから、全員が適正だと納得できる価格を決めることは非常に困難な作業のようだ。

 自身の置かれている環境や価値観によって値ごろ感は変わり、その折々での参照価格というフィルターを通した本人にとっての納得感が購買の決め手となる。消費者がネットで簡単に比較購買できる現代において、企業はより多くの消費者が納得する適正価格を追求することが重要だといえそうだ。
(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=A4studio)

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