クリスピードーナツ、なぜ客離れで閉店の嵐?甘すぎ&割高感が浸透した戦略の失敗?
「日本企業には優れた技術があるが、マーケティングのノウハウがないために海外企業に負けてしまう」という解説がよく聞かれ、書店にはマーケティングに関する書籍があふれている。また、マーケティングと聞くと華やかな職種というイメージも強く、就職活動中の学生の間にも志望する向きが強いようだ。
前回の本連載で「顧客満足度」について解説したが、企業は顧客だけではなく、当然他社の動向も気にしているはずだ。そこで、今回はマーケティングにおける「競争」について、立教大学経営学部教授の有馬賢治氏に解説してもらった。
二番煎じでも追いかけないと取り残されてしまう
――競争への対応を怠ると、どのような事態に陥るのでしょうか。
有馬賢治氏(以下、有馬) 他社が魅力的な新製品を売り出すと、当然相対的に自社製品の売上げは下がります。それを挽回するために、企業はその新製品のウリを模倣した製品を自社でも展開して、あとを追おうとしていきます。プラグ・イン・ハイブリッド車(PHV)や電気自動車(EV)が新しく登場した際に、類似の車種が国内外の他メーカーからも数多く生まれたという例がわかりやすいですね。
ほかにも、あるジャンルの雑誌が創刊されて話題になれば、似た読者層をターゲットとする雑誌が次々と生まれるのも同じケースです。物的な製品だけでなく、スマートフォン(スマホ)の使用料とPC固定回線の通信料がセット割引になったプランも、現在は三大キャリアともに実施しており、これも同様のあと追い現象といえるでしょう。おそらく売電事業においても今後同様な現象がみられると思います。
――二番煎じでもいいということでしょうか。
有馬 はい。仮に二番煎じさえもしないのであれば、顧客からは「遅れている」とみなされて、これまでに市場で得ていた地位が失墜してしまう可能性もあります。一度落とした評判を回復することは、いいブランドイメージを維持することよりも難しいのです。特に現代は、各マーケットにおける競争が激化の一途をたどっていますから、企業はターゲティングだけでなく、ポジショニングも重視することが求められています。
クリスピー・クリーム・ドーナツ失墜の原因
――ポジショニングを軽視して失敗した企業や製品の例はありますか。