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黒川智生の「アパレル、あばれる」

「アーバン・ファミマ!!」登場…コンビニとファッション店融合、難点と成功のカギを検証

文=黒川智生/VMIパートナーズ合同会社代表社員
「アーバン・ファミマ!!」登場…コンビニとファッション店融合、難点と成功のカギを検証の画像1
*画像;筆者撮影

「ずいぶん広いなぁ」。話題の現地を訪れ、店舗内を一周した後の素直な感想である。2月12日に虎ノ門ヒルズビジネスタワー2階で開業した「アーバン・ファミマ!!」は、コンビニエンスストアのファミリーマートとファッションのアーバンリサーチとが組んで企画した、都市型ワーカーに向けた新時代コンビニとファッション、ライフスタイルの融合ショップだという。今回はこの店舗をキッカケにして部門融合店舗の試みを考えたい。

 いきなりだが、この2つの店舗は別々の店舗として運営することも可能であっただろう。店舗内の中央部には、コンビニとしては少しゆったりした休憩スペースがあり、ここを共用するなどの方式なら、相互の行き来も期待できる。

 しかし、長い準備期間を経て同じ屋号で運営していく背景には、それぞれ単独では得られない何か、たとえば部門、品種を超えての購買動向にはどんな変化があるのか? など、従来では想定できない使われ方を見いだす意図などがあると、筆者は捉えている。

 ファミリーマートは他業態との取り組みに柔軟だ。先日には実験期間を終えた「Produced by ドン・キホーテ」が記憶に新しいところだ。都内の直営3店舗を選んで、2800種類を並べてネットでは体感できないリアル店舗ならではの“お買い物の楽しさ”を実現した。結果として、これら店舗の客単価は上昇。一定の評価を得た。

 アーバンリサーチは、多くのブランドを有する。ただ、最近の出店では、ブランド複合の「Make Store」型が成功している。エキナカや空港などの利便性の高い立地が多く、来店されるお客様の特性に応じて品揃えにも工夫がある。メンズ、レディスとも入ってすぐの場所に「WEBSTORE人気BEST10」の商品を揃えるラックがあり、“トリおけーる”というオンラインストアで見た商品を店舗へ取り寄せて試着できるサービスにも力を入れている。

「ITS’DEMO」の前例

 さて、コンビニとファッションストアとでは、来店頻度、購入単価、購入率とも残念ながら異なる。「残念ながら」と書くのは、何か一緒に広げてみるとシナジーがあるか? と組み合わせの妙味を追求したくなるも、簡単には融合しない現実を筆者が見てきたからだ。

 少し古い話だが、1998年12月にファッションコンビニエンスストア「ITS’DEMO」が神奈川県日吉に第一号店を開業した。ウェア、コスメ、雑貨、雑誌、食品といった分野の商品を揃え、メインターゲットを“情報に敏感で、自分の生活を大事にする働く女性”として、日常のスタイルアップを気軽に楽しんでもらえるお店という位置づけ。ターゲットはずばり“ポスト団塊ジュニア世代”だった。

 このストア業態開発に仲間と共に取り組んだ筆者であったが、開業当初は仮説がズレ、

・「どうしたら、ウェアと雑貨と食品は一緒に買われるのか?」

・「(当時の)ソニープラザやam/pm(コンビニ)と品揃え以外に何で差別化するか?」

など難点が山積だった。この頃、景気はあまり良くなく、何か閉塞感が強かった。ヤング系を中心にSPA型ブランドは伸び盛りであったが、一方で従来型の洋服や雑貨を品揃えするブランドは大きく売上を落としていた。それゆえの挑戦となり、今回の「アーバン・ファミマ!!」にもつながるテーマであった。

 黙っていても“変化”は起こせないと、多くの仲間と動いた。

・来店の習慣化を進めるべくポイントカードを導入。500円で1ポイント獲得。50ポイントで1000円分のクーポンとして利用できる。これは導入3カ月で2万枚を配り、お客様を知り、仮説を修正してゆくデータベースとした。

・店舗入り口付近にテーマ陳列によるテーブルを設置。季節感やある場面の過ごし方をどう考えているか? を表現して複数部門の商品を同時に手に取ってもらう。今でいう“非計画購買”の促進であろうか。

 こうしたプランを展開し、翌年4月に開業した下北沢店で、これらが少し実を結んだことを記憶している。

 その後、幾多の変遷の後、現在の「ITS’DEMO」はキャラクターとのコラボ商品やコスメの品揃えも多くなり、“プチプラ×なぜか行ってしまう話題のある店”という明確なポジションを獲得していると筆者は考える。いろいろな部門の商品がただ集められているだけでなく、それらをつなぐテーマや独特の雰囲気によって“融合”状態が実現しているのだ。

「アーバン・ファミマ!!」で考えられるプラン

 2020年の新業態も、多くの苦労と仮説修正の中で独自のソフトが蓄積されるだろう。

 最初は“URBAN・FAMIMA!! Select”のような商品から入るのが定石だが、以下のようなプランもありではないかと筆者は考える。

・アーバンリサーチが得意とする店舗内イベントを、中央フリースペースで運営。ヒルズビジネスタワーの皆さんへ、憩いや学びを朝昼晩に提供する。

・“トリおけーる”サービス拠点として、周囲のビル利用者にもアピールする。

ファミマ!!区画の天井に設置されている17台(?)のカメラで得られるデータを解析し、来店者像、各部門での商品選択行動、の読み取りを通じて、商品やサービスを開発する。

 今後に多くの展開があることを期待しつつ、このショップの変化について、多くの皆さんと議論していきたい。

(文=黒川智生/VMIパートナーズ合同会社代表社員)

黒川智生/VMIパートナーズ合同会社代表社員

黒川智生/VMIパートナーズ合同会社代表社員

1988年 國學院大學文学部史学科卒。株式会社ワールド入社。
コルディア部営業、ファッションコンビニエンスストア「ITS‘DEMO」開発、株式会社ダブルジェイ事業推進部長を担当。
2006年3月 MINTCAFEとして、東アジア圏のファッション小売における知識創造へ貢献をテーマに独立。以後、日本国内外のファッション系小売各企業様を対象に活動中。
2008年5月 VMIパートナーズ合同会社設立。
現在の活動
一般財団法人ファッション産業人材育成機構IFIビジネススクール 講師(2009年より現在まで)
(PFクラス 事業計画+物流基礎、ロジスティクス研究会運営)
学校法人 文化学園  文化服装学院 講師(2020年より現在まで)
(ファッション流通専門課程)
日本マーケティング学会 所属
VMIパートナーズ合同会社ホームページ

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