気軽に買える利便性と専門店をしのぐといわれるクオリティで、完全に根付いた感のあるコンビニエンスストアの100円コーヒー。その分各社の競争は熾烈で、豆を一新したり新しいドリップマシンに入れ替えたりするなどの進化が続いており、その力の入れ具合がうかがえる。
そこで、年間約200店のカフェめぐりをしながらバリスタとして活躍する柳隆晴氏に、コンビニ5社(セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップ、デイリーヤマザキ)、ファストフード店のマクドナルド、ショッピングモールのイオンで提供されている100円コーヒーを飲んでもらい、それぞれの特徴を教えてもらった。
まず、前提としてコンビニのコーヒーマシンには「ドリップ」と「エスプレッソ」の2タイプがあり、今はドリップタイプが主流だという。
「エスプレッソは20~30ccの少量で濃いコーヒーを抽出してからお湯で割ったもので、表面にクレマと呼ばれる泡が浮いています。エスプレッソタイプは独特の風味があるので、複雑な味わいが好みの人に合っていると思います。ドリップは飲みやすく、よりすっきりした味わいになります」(柳氏)
今回検証した7つのコーヒーの味わいを「すっきり」「苦み」のベクトルで表すと、以下のようになる。
<すっきり>
↑
セブン-イレブン セブンカフェ ホットコーヒー
ミニストップ ホットコーヒー
マクドナルド プレミアムローストコーヒー
ローソン マチカフェ コーヒー ※旧型マシン
ファミリーマート ブレンド
デイリーヤマザキ 日々カフェ レギュラーコーヒー
~~~
イオンドリップカフェ キリマンジャロブレンド
↓
<苦み>
「イオンドリップカフェ」はショッピングモールイオンのイートインコーナーやパン店の近くに併設されており、ショッピング時の休憩にはありがたい存在だ。7つのなかでは苦みが断トツという結果になった。
「イオンドリップカフェのコーヒーは深煎りで苦みが際立つ味わいなので、『コーヒーは苦いのが一番』という人にはオススメです。ミルクを入れれば飲みやすくなると思います」(同)
それでは、バリスタ・柳氏が選ぶ100円コーヒーベスト5を見ていこう。
5位 ローソン マチカフェ コーヒー(S)
2018年2月にメリタ社製のエスプレッソマシン「XT6」の導入が開始され、より短時間での提供が可能になったローソンの「マチカフェ」。公式サイトによれば、21年度には約1万4000店が新型マシンになる見込みだという。ブレンドコーヒー専用豆は、4カ国・5種の厳選されたアラビカ豆を採用している。
「ローソンのまちカフェは舌の中央と奥で刺激を感じますが、酸味はあまりなく、香りもかなりライトです。コク・苦みも落ち着いており、全体的なバランスはまずまずです」(同)
4位 ミニストップ ホットコーヒー(S)
従来、厨房でドリップしたコーヒーを専用ディスペンサーに移し替えて提供していたミニストップは、15年2月よりアペックス社製の新型マシン「CSS-1」の導入を開始し、淹れたての味をより早く提供できるようになった。5カ国・5種類のアラビカ豆をブレンドし、しっかりとした苦みとほのかな酸味、すっきりとした後味が特徴だ。
20年1月6日より、ホットコーヒーSサイズのテイクアウト価格が86円(税込み)に変更され、さらに買い求めやすくなった。
「やや浅煎りで香りがすっきりしています。ほんのりと甘みが感じられて、苦みはけっこう抑えられている。これといって突出したものはないけれど、すっきりマイルドな味わいで、バランスが取れている。これは万人受けするコーヒーだと思います。100円でも十分な品質なのに、これが86円となれば、変なカフェに行くよりも満足感がありそうです」(同)
3位 デイリーヤマザキ 日々カフェ レギュラーコーヒー
デイリーヤマザキには、コーヒーポーションをセットするタイプのキューリグ社製「K-cup」と、挽きたてのコーヒーを楽しめるアペックス社製「CS-1」の2タイプのマシンがある。今回飲んでもらったのは「CS-1」のコーヒーだ。
「最初に苦みがガツンときて、後味すっきり。良い意味での味のグラデーションが感じられ、冷めてきても嫌なエグみはなく、口当たりがなめらかです。デイリーヤマザキはコーヒーの印象がありませんでしたが、こんなにおいしいコーヒーを提供するとは、意外な発見でした。甘いものとの相性も良さそうですね」(同)
2位 セブン-イレブン セブンカフェ ホットコーヒー(R)
累計販売数50億杯を誇るセブン-イレブンの「セブンカフェ」は、13年1月より本格発売をスタートさせた。コンビニコーヒーとしてはローソン、ファミリーマートよりも後発だが、富士電機社製のドリップマシンを採用し、レギュラーコーヒーにおいて群を抜くクオリティを実現。「コンビニコーヒーといえばセブン」と言わしめるまでになった。
「コンビニコーヒーのなかではセブンが圧倒的に好きです。浅煎りの豆と深煎りの豆のミックスが良い塩梅で、優しい香りがスッと入ってくる。セブンのコーヒーは何回飲んでも飽きません」(同)
1位 マクドナルド プレミアムローストコーヒー(S)
ファストフード店のマクドナルドはメリタ社製のドリップマシン「CAFINA ALPFA」を採用。バリスタ監修のもとで5種類の豆の配合や焙煎の深さなどにこだわり、コーヒーの改良を重ねている。
「やや深煎りで、肉系の料理と合わせたときにちょうど良いコク・苦みのバランスになっています。アジア人初の“世界一のバリスタ”が監修についたこともあり、マックのコーヒーには絶大な信頼を寄せています。文句なしに一番おいしいでしょう!」(同)
ちなみに、ベスト5から漏れてしまったファミリーマートは「苦み抑えめのスッキリとした味わい」(同)とのこと。
今回はランキング形式で発表したが、コーヒーは嗜好性が高く、好みも個人によって千差万別。いつも買うものが決まっているという人も、これを機に飲み比べてみてはいかがだろうか。もしかしたら、いつもコーヒーを買っている店の50m先に、自分好みのコーヒーが待っているかもしれない。
(文=松嶋千春/清談社)