廃棄カツと廃棄ローストビーフ事件で改めて考えさせられるのは、「破棄しなければならない食品が、本当に適正に廃棄されているのか」ということだ。10年くらい前から食の安全が叫ばれるようになり、自主回収品が非常に増えている。
違反輸入品、異物混入品、アレルギー物質や期限表示などの表示違反品など、毎日のようにさまざまな食品が回収されている。これらの回収品が本当に廃棄されたかどうかは、国や地方自治体は確認していない。あくまで事業者性善説に基づいて「廃棄してくれているはずだ」というにすぎない。では、事業者を信用していいのだろうか。
4月9日、壱番屋がダイコーに委託していた廃棄物は、工場から排出された産業廃棄物だけでなく、社員食堂から出た残飯も委託していたことが明らかになった。社員食堂から出される残飯は、家庭ごみと同じ一般廃棄物に分類される。
産業廃棄物も一般廃棄物も、扱う業者はそれぞれ行政の認可が必要だ。ダイコーは、一般廃棄物の処理を許可されていない。許可されていない業者に委託をした壱番屋も、許可されていない一般廃棄物の処理を請け負ったダイコーも、廃棄物処理法違反の疑いがある。壱番屋は今年1月、横流し事件を調べていた愛知県に指摘されて初めて知ったという。
一部ではダイコーの大西会長が「引き受けなければ他の仕事を回さないと言われ、受け入れざるを得なかった」と主張したと報じられているが、壱番屋は「無理強いした事実はない」と否定している。どちらの言っていることが正しいかは第三者にはわからないが、1月に明らかになっていたことを報道されるまで公表しなかった壱番屋の企業姿勢には疑問を感じる。
3月、当編集部は壱番屋に以下の質問を行った。
【質問1】
公表されている6品目と「カレールー」「パン粉」「冷凍肉」以外に、貴社がダイコーに廃棄を委託したものはありますでしょうか。
【壱番屋の回答】
当社がダイコー株式会社に廃棄を依頼していたものは、大きく分けて以下の3種類です。(1)不良カツ類(機械トラブル等により、イレギュラーに発生)、(2)パン粉(冷凍カツを製造する工程で発生する使用済みパン粉)、(3)その他生ごみ等(製造工程で発生する生ごみや汚泥等)。
【筆者見解】
回答には、本社社員食堂の残飯については一切触れられていない。「産業廃棄物に限っての回答」ということかもしれないが、「廃棄物処理法に違反するかもしれない事項だから隠していたのではないか」と疑いたくなる。