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鯖(さば)輸入4割減…新型コロナで海産物の輸入が急減、“水産物”不足の懸念広がる

文=垣田達哉/消費者問題研究所代表
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「Getty Images」より

 新型コロナウイルスの感染拡大による食料不足は、生鮮品にまで及ぶ可能性がある。4月15日付本連載記事で述べたように、1~2月累計で野菜類は数量ベースで20.8%減、魚介類は17.7%減である。今回は、水産物について見てみよう。

 水産物も1~2月累計で2桁減少した品目が非常に多い。そのなかでも生活に影響が大きいと思われるものを以下の表に掲載した。水産物は輸入先が偏る傾向がある。例えば「ぎんざけ(銀鮭)」の輸入先は断トツの第1位がチリである。輸入総数量2万9977トンの内99.8%を占める。チリの現状について日本貿易振興機構(JETRO)は、3月18日付ビジネス短信で次のように報告している。

<3月16日、セバスティアン・ピニェラ大統領は国内での新型コロナウイルス感染者が増加している状況を踏まえ、3月18日午前0時より陸路、海路、空路すべての国境を閉鎖するとした。国境閉鎖後もチリ国籍所有者や、チリ居住の外国人は入国することができるが、特に感染リスクの高い国(イタリア、スペイン、イラン、中国、韓国、日本、フランス、ドイツ)から入国する場合、14日間の自宅待機が義務付けられる。なお、3月17日にハイメ・マニャリッチ保健相が発表したところによると、国内の新型コロナウイルス感染者が前日から45人増加し、201人に上っている>

 日本と違って感染者数201名でも国境閉鎖をしている。輸出産業やサプライチェーンにも影響は出ているだろう。意外かもしれないが、チリは「寒天」でも輸入先で第1位の国だ。消費者にすれば、銀鮭や寒天はなくてはならない食材ではないだろうが、扱っている事業者にすれば、このままの減少が続けば、商売への影響は大きくなるだろう。

 消費者に馴染のある食材の「さば」「あじ」も、金額ベースではともに40%近くの減少である。特に「さば」は、2カ月間で前年に比べ9000トンも減少しているが、輸入先第1位のノルウェーが数量ベースで92.6%を占める。

 人口約533万人のノルウェーの新型コロナウイルス感染者数は6677名、死亡者130名(4月15時点・在ノルウェー大使館)である。人口が約1億2600万人で感染者数約1万人(4月17日現在)の日本と比べると、ノルウェーのほうが、新型コロナウイルスの影響は大きいかもしれない。

「あじ」の輸入先は、第1位が韓国、第2位がオランダ、第3位がアイルランドである。数量ベースで韓国が約31%、オランダが16%、アイルランドが約12%を占めている。3国とも、当然ながら新型コロナウイルスの影響は大きい。「さば」も「あじ」も大衆魚として干物や缶詰等で、とても人気のある水産物だ。輸入先の各国の終息が長引けば、日本の食卓への影響も大きくなるだろう。

たこ、くろまぐろ、ひらめ、カレイ

「たこ」の輸入先第1位は、数量ベースで約46%を占める西アフリカのモーリタニアだ。モーリタニアは、4月10日時点で7名の感染者しか出ていないが、南部のセネガルとは実質、国境封鎖をしている。感染者数が少なくても、新型コロナウイルスへの警戒は強い。

 別名「本マグロ」といわれる「くろまぐろ」の輸入先第1位は、数量ベースで約55%を占めるマルタだ。第2位のモロッコは約17%、第3位のスペインは約12%である。本マグロは高級食材の一つだが、スーパーなどでも販売されている。輸入が増えなければ価格が高騰し、庶民にとってはますます高嶺の花になるかもしれない。

 練り物には必須の「たらのすり身(冷凍)」は、輸入先第1位が米国である。数量ベースで約99.7%を占める。日本で品薄になるかどうかは米国の状況次第だ。それによっては、練り物の価格が高騰するかもしれない。

「ひらめ、カレイ」も、数量ベースで▲39.2%と大幅に減少している。輸入先は第1位が米国、第2位がドイツ、第3位がグリーンランド(デンマーク)である。3カ国とも新型コロナウイルスの影響は甚大である。

「はまぐり」「しじみ」といった貝類にも影響は出ている。数量ベース19.6%減の「はまぐり」は、輸入先第1位の中国のシェアは約84%である。数量ベース27.6%減の「しじみ」は、輸入先第1位がロシアでシェア約48%、以下、台湾、中国である。

うなぎ」の輸入量も表のとおり激減しているが、この原因は必ずしも新型コロナの影響とは限らない。単に水揚げが少なかったかもしれないが、新型コロナの影響で漁に出られなかったということもあるかもしれない。

 昔は漁業大国の日本も、今では魚介類の自給率は55%(うち食用は9%)である。輸入量の減少は、食卓に大きな影響を与える。新型コロナのような未曾有の世界的危機に陥った時、どの国であっても、自国最優先で食料を確保しようとする。他国に融通する余力がないこともある。もちろん、金さえ出せば何でも手に入れることができるわけではない。

 国土が狭く人口が非常に多い日本だからこそ、新型コロナを教訓にし、真剣に食料自給率を上げる努力をしないと「いざという時に食べるものがない」ということになってしまう。コロナ終息後には経済復興も大切だが、自給率向上も合わせて取組まなければ、国は滅んでしまうかもしれない。

(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)

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垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

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