1万人削減、分社化断行…ソニー平井社長が激白、経営危機から完全復活への全真相
2012年にソニー社長に就任した平井一夫氏は、構造改革を推し進めた。なかでも効果が顕著に現れ、なおかつ社員の意識改革につながったのが、事業の分社化だ。全事業を分社化する方針で14年7月にテレビ事業を、15年10月にビデオ&サウンド事業を分社化した。16年4月には半導体事業の完全子会社としてソニーセミコンダクタソリューションズを設立。イメージング・プロダクツ&ソリューションセクターについても、分社化に向けた検討を進めている。
社内分社に当たるカンパニー制ではなく「分社化」まで踏み込み、本体とは異なる法人格を与えることで、事業ごとの業績の“見える化”が図られ、結果責任が問われるようになった。現場は、本社頼みから脱却し、自立志向が芽生えた。
今回はそんな改革の真相について、本連載前回記事『絶望から奇跡の完全復活…ソニー平井社長が激白、4年の覚悟の「構造改革」全真相』に引き続き、平井氏に話を聞いた。
分社化の狙い
片山修(以下、片山) 意識改革にもつながってきますが、平井改革の大きな柱のひとつが分社化です。正直、初めて聞いたときは、ここまでやらなきゃいけないのかと思いました。
平井一夫氏(以下、平井) 本社に頼らず自分たちで考え、経営指標のもとに自らの責任を果たしてもらいたいという考えからです。
私は、ソニー本体のEVP(副社長)になるまでは、ずっと子会社で仕事をしていました。SCEI(ソニー・コンピュータエンタテインメント)の社長でしたし、その前は、そのまた子会社の米国法人のトップでした。「一国一城の主」ですから、自分でヒト・モノ・カネの責任をもって決めていた。
その点、CFO(最高財務責任者)の吉田憲一郎も、ソネットで「一国一城の主」の経験があり、事業部と子会社とではトップの危機感が全然違うということは、二人とも経験的に知っていたんです。
片山 なるほど。説得力がありますね。
平井 「一国一城の主」すなわち社長であるということは、まったく責任感の醸成が違う。「これはあなたの会社です。あなたのヒト・モノ・カネで全部やってくださいね」と言ったほうが、マネジメントも社員も、規律というか緊迫感が醸成されると私は思います。実際に今、それがいい方向にまわっている。あとは、遠心力に対して、いかにバランスよく求心力をもつかです。
片山 分社化にあたって、社員の間に抵抗はなかったんですか。