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片山修のずだぶくろトップインタビュー 第1回 平井一夫氏(ソニー代表執行役社長兼CEO)後編

1万人削減、分社化断行…ソニー平井社長が激白、経営危機から完全復活への全真相

構成=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家
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片山 それは、“マッサージ”ですかね。ソニーという“体”がこれまで凝り固まっていたのを、コミュニケーションのマッサージによって、組織を柔らかくしているような印象を受けますね。

平井 たとえばミュージックのビジネスは、全アセット(資産)が人間です。いかに気難しいアーティストにいい作品をつくってもらうかという“人間商売”なんです。私は、ソニー・ミュージックエンタテインメント時代にそれを叩き込まれました。

 音楽に限らず、ソニーには同じような文化があります。私はいつも言うのですが、自分たちが盛り上がらないと、絶対にいい商品はできない。人間は、コミュニケーションして盛り上がって初めていいものができるのです。エンタテインメントでも、ハードやデバイスでも、サービスでも一緒だと思います。

トップの“本気”

片山 平井改革でもうひとつ大きかったのは、本社を小さくしたことですね。本社機能18部門と78部について、部門をなくしたうえ、部は13部にまで再編。本社機能の費用を13年度比3割削減。これで、社員はトップの“本気”を感じますよ。

平井 私は、現場に痛みを強いて、自分たちは何もしないということがいちばんイヤなんです。日本だけでなく、米国においていた本社機能も小さくしました。

片山 社員は見ていると思います。本社の間接費や人件費もカットした。強いメッセージになります。ただ、聖域に手を入れるのは大変ですよね。

平井 「やらねばならぬ」です。こういう仕事をさせていただく機会を得たんですから、悔いを残すのはいやです。やらなければいけないことが見えたら、全部やる。それ以外に選択肢はないです。

片山 最後に、課題はなんですか。

平井 私は決して、ソニーが復活したとは思っていません。まだ道半ばです。いい方向に向かっていますが、ここで「よくなった」なんて思ったらば大間違いで、この緊迫感を、私もマネジメントも、社員も継続しなくてはいけない。「もっとよくできるんだ、もっと素晴らしい世界があるんだ」と、つねに上を目指していくことが必要です。

 アクセルを離したり、クルーズコントロールを入れられちゃうと困る。ここからもう1回ギアシフトして、加速してもらわなきゃ困るんですよね。

 本当に復活したかどうかは、お客様が決めることであって、社員が勘違いしちゃいけない。マネジメントは、ますます勘違いしちゃダメですよね。

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

愛知県名古屋市生まれ。2001年~2011年までの10年間、学習院女子大学客員教授を務める。企業経営論の日本の第一人者。主要月刊誌『中央公論』『文藝春秋』『Voice』『潮』などのほか、『週刊エコノミスト』『SAPIO』『THE21』など多数の雑誌に論文を執筆。経済、経営、政治など幅広いテーマを手掛ける。『ソニーの法則』(小学館文庫)20万部、『トヨタの方式』(同)は8万部のベストセラー。著書は60冊を超える。中国語、韓国語への翻訳書多数。

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