13年3月期通期の売上高は前期比14.4%増の4900億円、営業利益は同8.9%増の565億円、純利益は同18.6%増の320億円を見込んでいる。好業績を背景に最大で100億円の自社株買いを実施し、利益を株主に還元する。
ユニ・チャームはバブル期の1988年、香川県綾歌郡宇多津町に高さ158mのゴールドタワーを建設したことで知られるが、バブル崩壊で01年9月に運営から撤退した。経営再建策として海外進出に取り組んだ。
海外進出は84年からスタートしているが、積極化したのは90年代後半からだ。今や、インドネシアとタイでは、ベビー用オムツや生理用品で約50%のトップシェアを誇る。現地に溶け込んで地道に商品を販売してきた、数少ない日本企業なのだ。
タイとインドネシアは、販売チャンネルの開拓手法に違いがある。2000年代前半にタイを攻略するときには、小売業態ごとに優良企業1社に的を絞った。コンビニはセブン-イレブン、ハイパーマートではテスコ・ロータスといった具合だ。業態別の地域一番店を攻略すれば他の小売店からも引き合いが来ると狙いをつけた。
一方、インドネシアでは「ワルン」と呼ばれる雑貨店を地道に開拓した。ワルンはインドネシアに200万店以上あるといわれる庶民の一大流通経路である。市場に浸透を図るため、海外大手が手をつけない地場の流通網を開拓した。
販売手法や価格戦略もマーケットによって変えた。タイではチャンネルごとに数量の異なるパッケージを開発したり、顧客の好みに応じた販促品をつけるなど工夫を凝らした。
インドネシアでは、赤ちゃんがいる家庭を200軒以上訪問して、ワルンで買い物する庶民をターゲットに、最低限の機能に絞った低価格の紙オムツ「マミーポコ スタンダード」を開発した。既存の商品の約半額の1900ルピア(約19円)の、パンツ型のオムツである。07年に発売するや、爆発的に大ヒット。インドネシアでは5割を超える圧倒的なシェアを取った。
アジアの成長率は、売り上げが年平均18.0%、営業利益は同27.1%、予想を上回る速度で成長を続けている。アジアの高い成長率に牽引され、12年3月期の海外売上高は前期比4.5ポイントアップして46.9%にまで高まった。海外売り上げが国内を逆転するのは、時間の問題だろう。
ユニ・チャームが、その先の目標として置いているのは、2020年度の世界シェア10%。経営資源を集中している紙オムツなどの紙製品とペットケアの業界では、米P&Gが約30%を占めトップ。2位は米キンバリー・クラークで約20%。ユニ・チャームはシェア10%を確実なものにして、大手2社を追撃する。
1兆円クラブ入りは、世界市場の2強への挑戦の第一歩なのである。
(文=編集部)