安倍政権を牛耳る日本会議、危険な「戦前回帰」運動…自民、天皇の政治利用を画策か
「始めにも述べましたように、憲法の下、天皇は国政に関する権能を有しません。そうした中で、このたび我が国の長い天皇の歴史を改めて振り返りつつ、これからも皇室がどのような時にも国民と共にあり、相たずさえてこの国の未来を築いていけるよう、そして象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ、ここに私の気持ちをお話しいたしました。国民の理解を得られることを、切に願っています」
ここでも、象徴天皇の制度が、安定的に続いていくことを念じられる姿勢がはっきり示されています。天皇陛下が、戦前の天皇制回帰への断固たる「拒絶の意思」を明確に示されているように受け止められます。
アナクロニズム思想
前述した『日本会議の正体』を読むと、日本会議の歴史がみえてきます。
すでに、1960年代から培ってきた右派の草の根運動の成果ともいえる2月11日の建国記念の日制定(66年・戦前の紀元節の復活)、政府主催の「憲法記念祝典」糾弾(76年)、元号法制化(79年)、自民党新綱領反対運動(85年)、天皇訪中反対運動(92年)、選択的夫婦別姓制度への反対運動(96年~)などを経て、97年に右派組織の双璧だった「日本を守る国民会議」と「日本を守る会」が大同団結して、日本会議は生まれます。
その後、国旗国歌法制定(99年)、外国人の地方参政権反対運動、衆参両院に「憲法調査会」設置(2000年)、首相の靖国参拝支持と「国立追悼施設」設置計画の反対運動(01年)、女系天皇を認める皇室典範改正反対運動(05年)、教育基本法改訂(06年)と成果をあげながら、日本会議待望の06年第1次安倍政権の誕生へと連なります。
同書(P.212)にいみじくも記されている通り、日本会議のテーマは次の5つに集約されます。
(1)天皇、皇室、天皇の護持とその崇敬
(2)現行憲法とそれに象徴される戦後体制の打破。
(3)「愛国的」な教育の推進
(4)「伝統的」な家族観の固守
(5)「自虐的」な歴史観の否定
戦前の体制こそが美しい、守るべき理想としているのですから、右派色の強い団体といえます。そして、自民党の改憲草案には日本会議の思想が随所にちりばめられ、婉曲な表現ながら明らかに戦前回帰を志向するものとなっています。
自民党の改憲草案にははっきりと「天皇は日本国の元首」とされ、「日本国の象徴」という現行憲法とはまったく異なるものとなっているからです。これこそ、天皇の政治利用をやりやすくするための条文であるとの疑いを強く感じます。
国会議員の280名もが、その趣旨に賛同するという日本会議に対して、筆者はアナクロニズム(時代錯誤)だと感じますが、私たちはその目指す内容をよく知り検証する必要があるのではないでしょうか。
二度と戦争の惨禍を引き起こさないためにも、平和に徹するこの国のかたちを、いつまでも志向していきたいと願うものです。
(文=神樹兵輔/マネーコンサルタント)