自動車業界は自動運転技術や環境技術が急速に進化している。自動車が常時インターネットに接続するコネクテッドカーが当たり前の時代の到来は、すぐそこに迫っている。最新情報を車内で取得したり、車車間通信・路車間通信によって交通事故を防いだり、渋滞を減らすことが可能となるコネクテッドカーは、自動車メーカーを問わず通信できなければ意味がない。このため、通信の規格などを共通化することが重要となる。
こうした規格づくりでは、欧米各社が先行する。欧米では自動車メーカーやサプライヤーが連携して共通の規格を策定、これらがグローバルでのデファクトスタンダード(事実上の標準化)となる。
トヨタが恐れるのは「日本車のガラパゴス化」で、すでに現実の問題になっている。代表的な例が、車車間・路車間通信システムでの周波数帯だ。トヨタは昨年10月、他社に先駆けて700メガヘルツ帯の車車間通信・路車間通信を実用化したが、欧米市場では5.9ギガヘルツ帯がスタンダード。このため、国内にインフラはあってもトヨタ以外で700メガヘルツ帯の車車間通信・路車間通信システムの実用化に追随した自動車メーカーは皆無だ。
環境技術でも同様だ。トヨタはハイブリッド車に注力しており、将来技術として燃料電池車を見据えるが、欧米自動車メーカーは電気自動車を将来の環境技術として有望視している。現状、燃料電池車に力を入れているのはトヨタとホンダぐらいだ。
開発が急速に進むコネクテッドカーや自動運転車では、規格の共通化が重視される。しかも、自動運転技術をめぐっては、グーグルやアップル、アマゾン、カーシェアリングサービスのウーバーなど、IT企業を中心とした異業種の参入が見込まれている。ITの世界では「勝者総取り」となるケースが多く、トヨタはデファクトスタンダードが得意なIT企業に自動車業界の主導権を奪われるのではないかとの危機感を持つ。
提携交渉は難航する可能性も
自前主義に強いこだわりを持っていたことから、「アライアンスが苦手」(豊田章男社長)と自負するトヨタだが、IT企業の進出、コネクテッドカーや先進運転支援システム技術の急速な進化など、業界を取り巻く環境の変化に危機感を抱き、経営方針を転換せざるを得なくなっている。BMWとの燃料電池車開発での提携、マツダとの包括提携、そして今回のスズキとの業務提携の検討と、矢継ぎ早にアライアンスを拡大している。さらに「提携はオープンなスタンス」として今後もアライアンスを拡大する姿勢を示す。