地方銀行が苦しんでいる。日本銀行の金融緩和以降、金利の低下で収益の圧迫が加速、さらにマイナス金利政策の導入で苦境に追い込まれ始めた。貸し出し一本足からのビジネスモデルの転換が急務だが、そんなノウハウをもっている地銀は皆無に等しい。殿様商売とも揶揄されたビジネススタイルからの転身に喘いでいる。
すでに3年半も続く金余り金融市場
2013年4月の量的緩和以降、金融市場は金余りの状況で貸し出し競争が激化していたが、マイナス金利がこれに拍車をかけた。中国地方の中堅企業経営者は振り返る。
「日銀がマイナス金利を導入すると発表した翌日に、地場の金融機関から融資の相談があった。金を借りてもらえないか、と言われても、資金需要はないから当然、断った。その後も、性懲りもなくときどきくる」
全国地方銀行協会のまとめでは、15年度は11年度に比べて貸出金利回りが1.71%から1.31%に下がり、預貸金利ざやは0.55%から0.35%に低下。マイナス金利政策が本格的に効いてくる16年度は、さらなる利ざやの縮小が確実視される。米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、銀行の本業のもうけを示す業務純益が16年度は地銀で15%、大手銀行で8%の減益になると試算している。
付加価値事業の創出が急務
全国地方銀行協会の中西勝則会長は、「簡単ではないが、コンサルティング営業など付加価値の創出を地道にやらなくてはいけない。現時点で気づいていない金利が高い金の流れをつかむ努力も必要だ」と、収益構造の転換の必要性を説く。ただ、これを実行に移すのは言うほど簡単ではない。地銀幹部は「かつて、貸し出しが過度になり不良債権が膨らむことに金融庁が目を光らせていた苦い経験がある。リスクはとりたくない」と苦々しく語る。
生命保険などの窓口販売の手数料収入でしのいでいたが、金融庁が顧客への手数料の非開示を問題視したことで、利幅の大きい保険商品を売るという「小手先」のしのぎも限界を迎える。金融庁は加えて、担保主義から事業性融資への転換や経営難の中小企業への成長融資を地銀に促す。