「国産&オーガニック、おもてなし」一辺倒で十分か?東京五輪フード・ビジョンの盲点
2020年の東京五輪・パラリンピックの会場変更問題が連日、世間を賑わせている。ボート・カヌーの会場については、代替候補地である宮城県の震災復興への期待が絡んで、さらに問題が“ややこしい”。決着に向けては、小池百合子都知事の手腕が問われるところだろう。
さて、会場変更問題ほど賑やかではないが、東京五輪に向けて、大会期間中の選手や運営スタッフの「食事」と、それにともなう「食材調達」をどうするのかという問題も水面下で議論と準備が進んでいる。
「フード・ビジョン」という言葉をご存知だろうか。12年に開催されたロンドン大会がそのきっかけをつくり、今年のリオデジャネイロ大会でも踏襲され、恐らく東京大会にも受け継がれるであろう、五輪・パラリンピックに際しての「食」についての方針発表と運営方法である。
フード・ビジョンとはその名の通り、世界中から注目される五輪開催中の「食材調達に関わる考え方」を明確に示すものだ。
IOC(国際オリンピック委員会)は1990年代に入ってから、環境保全を大きく掲げるようになった。ロンドン大会は、その誘致活動の時から「史上もっとも環境に配慮した大会」を謳った大会だった。会場建設から選手村の食事に至るまで、徹底して「持続可能性」が追求された。
ロンドン大会組織委員会は五輪史上初めてフード・ビジョンを提唱し、「食品の持続可能な調達」を明確に打ち出し、「五輪は高品質で多様な地域食を提供する機会だ」としてオーガニック食材の優先調達や原則国産を基準に盛り込んだ。後述の通りこの試みは成功し、以降のリオ、東京へと引き継がれることになる。
ロンドン大会では開催から数えて3年前の09年にフード・ビジョンが発表されている。リオ大会では2年前の14年だ。東京大会のそれも、遅くとも来年には発表されるとみられている。
持続可能性(サステナビリティ)という視点の欠如
さて、フード・ビジョン策定に向けた議論では、「食材の採用基準はどうなるのか」「やはりオーガニック食材の使用が盛り込まれるのか」という点がテーマとなるため、「日本では農作物の国際的な基準であるGAP(Good Agricultural Practice:農業生産工程管理、各国で制度化されている農業の世界的な品質保証制度)がまったく浸透していないから、有機JAS規格しかない」「有機JISマーク取得には3年はかかるから、早く手を打たないと間に合わない」という話になりがちである。また、「日本ではオーガニックに取り組む農家が少ないので、国産では食材が足りない」と心配する向きもあるようだ。