予測に成功したメディアもある
前述のネイト・シルバー氏も今回の大統領選予測を外したひとりですが、予測に成功したケースもあるようです。そのひとつが、南カリフォルニア大学とロサンゼルス・タイムスの共同調査です。その特徴は、どの候補に投票するかを0~100点の尺度で答えさせた点にあります。また、実際に投票に行く可能性についても、同じ尺度で聞いています。今回大方の予測が外れた要因の1つは、トランプ支持者が投票に行く確率を過小評価したことです。このような多段階の尺度で聞くことで、彼らが投票に行く可能性を切り捨てずに済んだと考えられています。
他方、従来の世論調査の限界を乗り越えるには、ソーシャルメディアの情報が役に立つという主張もあります。11月12日付「TechCrunch」記事には、クリントン、トランプ両候補について、ソーシャルメディアでの話題性や評価を示す指標が掲げられています。そこからいえるのは、ソーシャルメディアではほとんどの時期について、トランプ氏がクリントン氏を存在感で上回っていたということです。こうした勢いを通常の世論調査で測るのは難しいと思われます。
おもしろいのは、話題の方向性が正か負かを示す「センチメント」という指標です。トランプは正と負のセンチメントの両面でクリントンを上回っていました。負の話題が多いことが妨げにならなかったことから、ソーシャルメディアではともかく話題になることが重要だとも考えられます。ただし投票日直前の数日間は、両候補に対する負のセンチメントに差がなくなっています。最後の最後にきてトランプへの負のセンチメントが減少したことに、彼が勝利する予兆があったかもしれません。
トランプ陣営の「デジタル・ファースト」戦略
トランプに関するソーシャルメディアでの話題性や評価が高かった背景には、トランプ陣営のコミュニケーション戦略が功を奏した可能性があります。11月15日付「WIRED」記事によれば、選挙に用いた広告費の総額ではクリントン陣営が圧倒的に多いものの、トランプ陣営はテレビ広告よりもインターネット広告、特にFacebookに力を注ぎました。クリントン陣営もまたインターネットを活用しましたが、そこに集中した度合いにおいてトランプ陣営が上回ったことは、クリントン陣営を手伝った専門家も認めています。