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世論が2つに分かれていく現象は「分極化」と呼ばれています。マーケティング分野でも、「Windows対Mac」「iOS対Android」というように2大勢力が争う、一種の分極化の状況を見かけます。といっても、米国の大統領選のようにシェアが均等化しているわけではありません。日本の国政選挙を見ても、世論の分極化は起きていたとしても、得票数のシェアが均等化しているとはいえません。他の国を見てもほぼ同様であり、シェアが均等化するのは米国の政治状況がかなり特殊だからかもしれません。
世論が分極化するのは、人々の意見が多様である以上当然であり、理解できる気がします。しかし、なぜ米大統領選ではほぼ均等に分かれるのかが不思議です。
ひとつの説明として、有権者がマイノリティ・ゲームを戦っている、という設定が考えられます。2大政党のもと、有権者が少数派になることを好むなら、支持する候補のシェアが50%を超した途端に対立候補を支持するようになるので、各候補のシェアは50%の前後で揺れ動くはずです。しかし、多数派になることを競う政治的闘争で、有権者が少数派になることを好むと考えるのは奇妙です。
別の説明は、多くの有権者はどちらの候補を支持していいかわからず、それぞれへの投票確率は50%だというものです(棄権は認めません)。各有権者が独立に投票先を選ぶとしたら、各候補のシェアは平均して50%になります。しかし、この設定が正しいなら、一人ひとりの投票行動を追跡したとき、2つの勢力の間で揺れ動いているはずですが、果たして実際にそうなっているでしょうか。また、個々の有権者が互いに影響を受けない(独立している)という仮定も、あまり現実的ではありません。
これら以外に、もっと説得力のあるな仮説があり得るかもしれません。あるいは、現実があたかも必然的に起きていると考えるのでなく、たまたま対立する2つの勢力が存在し、現在のところたまたま拮抗しているにすぎない、という説明だって可能でしょう。いずれにしろ、米国の政治が今後どのような方向に進むかは、かなり予測が難しいことは間違いありません。マーケターもまた不確実な世界で戦っているのですから、政治における予測の悪戦苦闘から学ぶべきことは多いはずです。
(文=水野誠/明治大学商学部教授)
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