「ソニー復活」の大文字が経済メディアに躍る。
11月1日の9月中間決算の記者会見で、次期社長にほぼ確定しているといわれている吉田憲一郎副社長兼最高財務責任者(CFO)は、「環境の変化に合わせて事業は見直すが、現時点で(事業の次の)売却予定はない」と、事実上の「リストラ完了」宣言をした。
ソニーは巨額赤字から脱却し2016年3月期、3年ぶりに税引き後利益で黒字に転換した。ところが、本格的な復活を数字が示すはずの17年3月期の業績予想を下方修正した。
売上高は前期比9%減の7兆4000億円と、7月時点の見通しを据え置いた。営業利益は3000億円から2700億円に、純利益も800億円から600億円に下方修正した。村田製作所に電池事業を譲渡したことに伴う売却損を計上するためだ。
決算発表翌日の11月2日の東京株式市場でソニー株は一時、前日比3%安となった。「何が今後の成長の柱となるのか。稼ぐ力が見えてこない」と、エレクトロニクス業界のアナリストは辛口の評価をする。
「カメラ用センサーを主力にしているが、センサーの用途先はデジタルカメラからスマートフォン用カメラに移り、いまやスマホは飽和状態。それで、今後の用途として医療や家庭用のさまざまな家電に使うという話になっているが、それはいつなのか。実際にそこまで広がるのか。ロボットにも手を出しているが、おもちゃの範疇を超えていない」(前出のアナリスト)
続けて、こうも指摘する。
「その一方で、電池事業を村田製作所に売却してしまった。電池はこれからの成長分野にもかかわらずです。ソニーは、もともと電池が一番強かった。しかし、出井伸之元会長の時に電池事業を合理化した結果、弱くなってしまった」(同)
JPモルガン証券は11月2日付のリポートで、「(ソニーが5000億円以上としている)2018年3月期の連結営業利益が下振れリスクがある」と指摘した。
経済メディアは「ソニー復活」の旗を振るが、市場はソニーの復活に関して、いまだに懐疑的なのだ。
「今後のものづくりをどうして行くのかが見えてこない。ゲームと金融で生きていくのか。ゲームはヒットするかどうか水モノ。金融に特化したら製造業でなくなる」(市場関係者)
一方で、17年4月で就任5年を迎える平井一夫社長兼最高経営責任者(CEO)は、退任の可能性が出てきたとの見方が強まっている。
平井氏の報酬は前CEOのハワード・ストリンガー氏を上回っているが、再建途上にあり、東京周辺の中核都市の人口に匹敵する人数のリストラを断行した企業のトップという自覚に欠けるとの批判も多い。