もうひとつは、廃棄物を適正に処理するためには、適正な費用がかかるということを軽視する風潮があるという。つまり、食品廃棄物を排出する企業の責任と、食品廃棄物を処理する際の料金・コストをめぐって、大きな問題が起きているというのだ。
「食品リサイクルには、通常の焼却や埋め立てよりも人手も時間もかかる(略)リサイクルにはキロ30円も40円もかかるんだという話があります」(山田委員)
ところが、今回のココイチ事件では、「キロ10円以下」だという。
「キロ10円以下ではちゃんとしたリサイクルが難しい、(略)排出事業者は何を考えているのか知らないけれども、そういう安い処理業者に平気で出しているんです」(同)
おまえら、なんぼにするんだ
実は、今回の事件は、いろいろなことを象徴している事件だ。たとえば、産業廃棄物処理業者・ダイコーの廃棄物保管倉庫は愛知県4カ所と岐阜県1カ所の計5カ所に分散し、そのなかに飲料水や調味料、菓子類、乾燥野菜、小麦粉、冷凍食品などが保管されていた。そのうち排出事業者が特定できたのは全体の6割程度で、それは107社分の重量にして1000トン以上になる【編注5】。
「様々な食品メーカーのラベルがいっぱいあったという事態なんですね」(同)
なぜ、そうなったのか。それは、排出事業者と処理業者の間に介在し、“廃棄物処理や廃棄物取引の仲立ち、管理コストの削減をうたう”事業者が増え、排出者と処理業者の直接の関係性が非常に希薄になったことが原因ではないか、と山田委員は見ている。
「ブローカーがいるわけですよ」(同)
ブローカーは廃棄物管理業者と称して、廃棄物数量の集計から処理費用の支払い、リサイクルの推進、行政対応など排出事業者の責任にかかわる業務のほぼすべてを代行する。これを廃棄物の一元管理と呼ぶという。特に大手スーパーなどの廃棄物処理担当者は、多忙な上に会社からコストダウンを迫られているだけに、ブローカーの「安くします」「交渉します」という誘いに乗りやすい。
その結果、廃棄物の収集運搬業者と処分業者に対する、収集運搬・処理料金の値切り(料金の引き下げ)が助長されがちだという。
事業活動に伴って生じる事業系ごみ、具体的には産業廃棄物(汚泥や廃油、金属くずなど20種)と、産業廃棄物以外の一般廃棄物の場合、こんな話もあるようだ。ひとつの市で、その収集運搬に介入したブローカーが許可業者を集め、処理料金をいくらにするか、と迫る。