長崎県トップの地方銀行である十八銀行の森甲成専務(当時)が、自宅マンションから飛び降りて亡くなった――。2016年11月末、この一報が金融業界を揺るがした。
森氏は、総資産額が日本第2位の地銀グループである、ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)と十八銀行の経営統合を進めた中心人物で、「次期頭取」と目された人物だ。
十八銀行とFFGは今年4月に経営統合し、上場廃止になる予定だったが、FFG傘下の親和銀行と十八銀行が合併すれば、あまりに長崎県内のシェアが高くなりすぎる。そのため、公正取引委員会が難色を示し、審査が延びてしまった。
十八銀行は当初、昨年8月に公取委の最終審査をパスしてFFGと最終契約を締結、同年12月に臨時株主総会を開き合併を承認する、という段取りだった(現在は、今年4月に予定していた経営統合を10月に延期する方向で最終調整に入っている)。
森氏は十八銀行側で、公取委との折衝の窓口だったこともあり、心労が重なっての自殺とみられている。
学閥で合併話が進んだ?
ムック「別冊宝島2539 東京五輪後に地方は崩壊する」(宝島社)のルポ『十八銀行の専務はなぜ自殺したのか?』は、この背景に学閥が関係しているのではないかと解説する。
同ルポによると、現在、金融庁が推進する地銀再編のさきがけになると見られているのは九州だ。その中心は、九州トップ行の福岡銀行擁するFFGだ。06年12月に福岡銀行と熊本ファミリー銀行(13年4月熊本銀行に改称)の経営統合が決まり、07年4月に持株会社FFGを設立。同年10月には、長崎県ナンバー2で長らく十八銀行としのぎを削っていた親和銀行を傘下に加えた。
FFG構築の立役者は、福岡銀行会長の谷正明氏だ。FFGを総資産日本一の地方銀行グループに押し上げ、自身は九州の地銀からは初となる全国地方銀行協会会長の座を射止めた。その後を継ぎ、同じくプロパーの柴戸隆成氏が14年に頭取に就いて現在に至る。
一方の十八銀行は当初、FFG以外のグループとの経営統合を考えていたようだ。
「十八銀行は、肥後銀行(熊本)と鹿児島銀行が経営統合して15年10月に誕生した九州フィナンシャルグループ(FG)との合併を模索していた。この3行は『つばさ会』という実務レベルの勉強会を10年以上続けていた。持ち株会社の社名案として『九州つばさFG』を商標登録していたほどだ」(同誌より)