東京都内を中心に4年間で19店舗を出店、昨年11月にはシンガポールに初の海外店舗をオープンした海鮮居酒屋「四十八漁場」(よんぱちぎょじょう)。
その日の朝に水揚げされた魚を漁師から直接買い取り、各店舗で提供するという仕組みをはじめ、これまでは「価値がない」とみなされ海に返されていた「未利用魚」を使ったメニュー開発などで注目されている。
運営するのは、ミッションに「食のあるべき姿を追求する」を掲げ、四十八漁場のほかに地鶏料理店「塚田農場」などを展開するエー・ピーカンパニー。2012年に東京証券取引所マザーズに上場し、翌年には東証一部に市場変更するなど、スピード成長を遂げている企業だ。
そこで、同社の経営幹部に、四十八漁場が目指す「次世代の漁業ビジネス創出」をはじめ、経営の秘密を聞いた。
異色の漁師直送モデルは「2048年問題」への対抗策
四十八漁場の特徴のひとつは、グロテスクな外見ゆえに敬遠されたり、味はおいしいにもかかわらず漁獲量が少なくて市場に出回らなかったりと、日の目を見ない未利用魚に価値を見いだしメニュー化していることだ。
エー・ピーカンパニーで魚事業部を統括する横澤将司氏は、この取り組みの理由について「海洋資源の減少によって食用魚が消えるといわれる『2048年問題』を防ぎたい」という考えからだと説明する。
「国レベルで漁業が変わっていかないと問題はなくなりませんが、『自分たちで展開して、少しでも多くの人に知ってもらうだけでも違うんじゃないか』と考えています。たとえば、私たちが契約している漁師さんは『定置網』や『かご漁』という昔ながらの漁業を受け継いでいる方々です。つまり、自分たちが食べる分だけを獲り、余剰分を売りに出している。そういう昔ながらのやり方にこだわっている漁師さんや漁協とだけ、お付き合いをしています」(横澤氏)
実は、四十八漁場という店名も2048年問題に由来する。また、同社では未利用魚を活用することによって無駄をなくし、生産者の収入を増やす試みも行っているという。
「大型のトロール船で獲られた魚の半分は海に投棄されるといわれています。また、人気のない魚は練り物になったりしますが、手間をかけても二束三文で買い叩かれます。それが、漁業就労者の収入や人数の減少につながっているのです。これまで捨てられていた魚が売り物になれば、漁師さんの収入が上がりますし、全種買取りができれば収入が安定し、セーフティネットにもなるわけです」(同)
そうしてたどり着いたのが、仲卸業者を通さない漁師直結のビジネスモデルだ。もっとも、最初は取引先が千葉と宮崎の2カ所だけで、魚種も少なかったという。
「そのため、仕方なく刺し盛りのなかに『炙ったカマス』と『炙ってないカマス』を入れないといけないときもありました。『これじゃ、お客様は喜ばないよね』というわけで、なにしろ、四十八漁場の1店舗目で初年度に一番売れたメニューはポテトサラダでしたから。現在は全国30カ所以上に産地を広げ、魚種も増えたので、ようやく海鮮居酒屋として認知されてきたかな、というところです」(同)