新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う景気後退で、雇用環境が急速に悪化している。厚生労働省の集計によると、9月23日時点でのコロナ関連の解雇と雇い止めは計6万439人。8月31日から9月23日までの23日間で、約1万人増えたことになり、1日平均では約500人が解雇されていることになる。同期間の1日あたりの新規感染者は9月11日の680人が最高、同月15日の301人が最低で、おおよそ500人前後のラインを推移している。日々の失業者が新規感染者と並ぶ事態に達しつつある。
共同通信は24日、記事『コロナ解雇・雇い止め、6万人超 増加スピード速まる、厚労省集計』を配信した。同記事によると、「解雇や雇い止めは5月21日に1万人を、6月4日に2万人を超えた。それ以降は1カ月前後で1万人のペースで増加していた。経済停滞が長期化し、企業が持ちこたえられず解雇や雇い止めにつながった可能性もある。産業別では製造業、宿泊業、飲食業、小売業、労働者派遣業の順に多かった」という。
「Go To」奏功なら解雇者は増えないはずだが……
政府の鳴り物入りで7月22日から始まった「Go To トラベル」は大手旅行代理店をはじめ、「奏功しつつある」との感触を示していた。奏功しているのなら、解雇者は増加しないのではないか。
栃木県内の旅館の契約社員の40代男性は先月末、契約更新の打ち切りを通達されたという。
「たしかに、Go Toでお客さんは来ました。有識者や旅行代理店の経営者が誇るように、仕組みとして宿泊業者のみならず交通事業者、土産物製造者、生産者すべてにお金が回るのは理解できます。しかし、問題は資金還流のスピードなのです。直接、旅館に支払われるのであれば、話は別でした。
私は経営に携わっているわけではないので、どこがボトルネックになっているのかわかりませんが、少なくともキャンペーンで払われたはずの代金は我々の元には届いている感覚はありません。経営側は雇用調整助成金もフル活用していたと思いますが、キャンペーンで回収する利益を待たずに会社の体力が尽きたようです。
何とか生き残れると信じて、最低賃金ギリギリの給与であってもキャンペーンで降って湧いた繁忙期をがんばり抜きましたが、その結果がこれです」
政府は事業者支援だけではなく、雇用維持の方策としてさらに「Go To イート」「Go To イベント」を進める方針だが基本的な構造は「Go To トラベル」と同じだ。
千葉県内の某アミューズメントパーク契約社員の20代男性も次のように述べる。
「一部で報道されていたようにうちの施設では今月、契約社員を集めた説明会が開かれました。私も勤務の継続を希望する場合の収入は『半年で約22万円』と提示されました。少しずつ営業状態も戻っていますし、危機は脱したのではないかという楽観論が同僚の間にもあっただけに本当にショックです。
施設は千葉県ですし、来場者数を制限していたとはいえ、今年の夏は一連のキャンペーンを利用して来園される方も多かったと思います。それに雇用調整助成金などさまざまな支援制度もあったと思いますが、そのお金はどこにいったのでしょう。これなら、変な細工をせずに、国民1人1人に生活費を給付してほしかったです」
解雇者の激増もさることながら、上記の2人のように極限まで労働者を削減した職場が「働きやすい職場」になるとは到底思えない。失業者の増加、低賃金、過重労働の蔓延など、一昔にあった暗い時代が再び現出しつつある。
(文=編集部)