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2020年の東京五輪開催を控えて、中央区でも繁華街・銀座と選手村のある晴海にLRT構想が打ち出された。東京都は路面電車計画を否定するものではないとしながらも、BRTと呼ばれるバス輸送システムを導入することを決定。BRTが導入されることで、実質的に銀座-晴海間のLRT構想は闇に葬り去られた。BRTに比べて、道路上に線路を敷設するLRTは、道路を占用するから邪魔になる――BRTとLRTの議論を見ていると、そんな思惑が透けてみえる。
鉄道への依存度が高い東京でさえ路面電車への理解は低い。まして、自動車依存が強い地方都市でLRTに対する理解は一向に深まらない。
栃木県宇都宮市は中心市街地で慢性的な渋滞が発生し、長年の行政課題となっていた。そうした渋滞を解消するために、市はLRT計画を発表。LRT建設の是非は、市長選の公約のひとつにもなった。選挙の結果、推進派の市長が当選したが宇都宮市のLRT計画は順調に進んでいるとはいいがたい。どうして、これほどまでに路面電車は忌避されるのか。
「ヨーロッパや北米といった先進国では、道路は“みんなのもの”という概念から歩行者を中心に自動車も路面電車も使える空間として整備されています。一方、日本でも道路は“みんなのもの”という概念ですが、道路の一部とはいえ路面電車が走ると自動車交通を阻害することになるため、“鉄道が道路を占用している”と思われてしまうのです。また、道路上に電車と自動車が一緒に走ることで事故の危険性が高まります。道路管理者や警察は“交通安全”を題目として、路面電車を排除してでも安全を確保しようと考えています。そうしたことから、道路に電車を走らせるのは好ましくないという空気があり、LRT構想は遅々として進まないのです」(道路関係のシンクタンク職員)
葛飾区が発表したLRT構想は、貨物線を利用するから路面電車が道路を走ることはない。それでも、線路と道路の交差部などに踏切が設置されて、それが渋滞の原因になるという理由から反対する声もある。
葛飾区がLRT構想を発表したことで、沈滞ムードになっていた全国の路面電車構想が活性化することはあるのか。道路における自動車と電車の対立は、今も続いている。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)
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