ヤマト、業績悪化&運転手パンクの元凶・アマゾンと取引中止すべき…佐川は放逐に成功
ヤマト運輸の労働組合が、2月中旬に行われた今年の春季労使交渉で、宅配便の引受総量の抑制を会社側に求めた。会社側は申し入れを真摯に受け止め、対策の検討に入った。
検討されている対策のなかには、無料再配達などの現在の手厚いサービスの見直し、運賃の値上げ、そして宅配ドライバ-など従業員の働き方改革などが含まれている。私たち市民の便利な宅配生活に影響が出る可能性があるので、成り行きが注目されている。
しかし、ヤマトの問題は実は上記のような総論での対策によるよりも、企業戦略的な選択で解決すると私は見ている。それはずばり、顧客としてのアマゾンの放逐だ。
アマゾンというババをヤマトに引かせた佐川
ヤマトの「苦悩の元年」は2013年だった。インターネット通販の市場規模は15年に約13.8兆円に達したのだが、12年には約9.5兆円だった(経済産業省調べ、以下同)。10年からは年率10%程度伸びていたが、13年に約11.2兆円と対前年比で17%の伸張を果たし、「階段を上った」年となった。
ネット通販の雄といえばもちろんアマゾンだが、13年まではアマゾンの宅配は佐川急便1社のほぼ独占的な取り扱いだった。しかし、アマゾンからの一個あたりの配送手数料の採算性が悪い状況を受け、あまりの宅配個数の伸張のために、佐川は手数料値上げの要請という交渉により、実質的に取り扱いを停止した。
宅配業界は、佐川のほかにはヤマトと日本郵便が大手3社を形成している。15年の宅配便シェアはヤマトが46.7%、佐川が32.3%、日本郵便が13.8%と3社で90%を超えている(国土交通省調べ)。
佐川がアマゾンから撤退したのを潮時にヤマトと、一部日本郵便がアマゾンの宅配を受任して現在に至っている。
売上シェアを追ったヤマトと、利益を尊重した佐川、どちらが戦略的に賢い選択をしたのか。
賢かった佐川急便、ぬか喜びしたヤマト
アマゾンと取引した最終年に当たる12年3月期の佐川のデリバリー事業は、売上が7,664億円だった。アマゾンとの取引を中止したことで、14年同期の売上は7,094億円へと7.5%減衰し、16年3月期に至っても7,215億円とアマゾン時代まで回復していない。
ところが、佐川のデリバリー事業の営業利益は、12年の253億円から14年には363億円へと急伸張し、16年3月期は384億円と、対売上営業利益率5.3%で着地している。アマゾンを手放したことにより、収益が大いに改善した。