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金子智朗「会計士による会計的でないビジネス教室」

バリバリ働き&遊ぶ彼の充実した人生は、彼自身が「つくった」…トヨタ流コストをつくる発想

文=金子智朗/公認会計士、ブライトワイズコンサルティング代表
バリバリ働き&遊ぶ彼の充実した人生は、彼自身が「つくった」…トヨタ流コストをつくる発想の画像1「Thinkstock」より

 コスト・マネジメントの手法に原価企画というものがある。これはトヨタ自動車が考え出した手法で、現在は世界中の多くの製造業に広がっている。

 原価企画とは、文字通り原価、すなわちコストを自らつくり出すというものだ。通常のコスト・マネジメントは、「発生するコストをどう管理するか」と受動的に考えるのが普通であるが、原価企画は「コストを自らつくる」と能動的に考えるところが画期的である。

 この考え方、実はキャリアや人生を考える上でも役に立つ。今回は、コスト・マネジメントの手法から人生訓めいたものを読み取ってみたい。

コストをつくり込む

 まずは原価企画の説明から始めよう。

 人手による作業が中心だったかつての製造業では、製造現場における原材料の無駄遣いや作業効率などが管理上の大きな関心事だった。そこでは、原材料の使用量や作業時間などに目標値を設定し、その通りに労働者を働かせるノルマ管理が管理の主体だった。これは、製造段階でコストを管理する余地が多分にあったことを意味する。

 ところが製造現場において機械化、コンピュータ化が進んだ現在においては、原材料は正確に計量され、予定通りに消費される。人に取って代わったロボットは文句一つ言わずプログラムされた通りに作業をこなす。このように自動化が進んだ製造現場では、ノルマ管理の意味はほとんどない。すべての作業がほぼ予定通りに実行されるからだ。

 このことは、製造段階でのコスト削減余地がほとんどなくなってしまったことを意味する。機械化・コンピュータ化が高度に進んだ製造業においては、製造コストの90%以上が製造段階より前の製品企画や設計の段階で決まるといわれている。従来のように製造段階でコストをどうこうしようとしても手遅れなのだ。

 そこで登場したのが、原価企画である。原価企画では製品の企画・設計段階において目標コストを定め、それを実現するように使用する原材料や生産計画を徹底的に考えるのである。企画や設計というコスト発生の源流に遡って、「コストをつくり込む」ということだ。英語では「target costing」というが、コストを狙い通りにするニュアンスがよく出ている。

 この原価企画が、トヨタのコスト競争力を支えているのである。

金子智朗/公認会計士、ブライトワイズコンサルティング代表

金子智朗/公認会計士、ブライトワイズコンサルティング代表

1965年神奈川県生まれ。東京大学工学部卒業。東京大学大学院工学系研究科修士課程卒業。卒業後、日本航空(株)において情報システムの企画・開発に従事。在職中の1996年に公認会計士第2次試験合格。同年プライスウォーターハウスコンサルタント(株)入社。2000年公認会計士登録し、独立。2003税理士登録。2006年ブライトワイズコンサルティング合同会社(www.brightwise.jp)設立、代表社員就任(現任)。
ブライトワイズコンサルティング

Twitter:@TomKaneko

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