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“ガラパゴス化”する日本のマイナスイオン家電 薄い効果でも誇大広告が横行の実態

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“ガラパゴス化”する日本のマイナスイオン家電 薄い効果でも誇大広告が横行の実態の画像1シャープのプラズマクラスター・サイクロン掃除機
(「同社HP」より)

●なぜ掃除機にイオン発生機が?

 2012年11月、シャープのプラズマクラスター掃除機が消費者庁から景品表示法に違反するとして措置命令を受けた。掃除機の性能に問題があったわけではない。搭載されたプラズマクラスターイオン発生機に関するカタログやウェブサイトの表示が、一般消費者に「著しく優良」と思わせるものと判断されたのだ。消費者庁からは、景品表示法違反について消費者に周知徹底し、再発防止を講じるなどの命令を受けている。

【景品表示法違反の対象となった機種一覧】
http://www.caa.go.jp/representation/pdf/121128premiums_1.pdf

 そもそも、なぜ掃除機にイオン発生機が必要だったのか?

 アレルギーや花粉症の対策として、室内の掃除をすることは有効だ。むしろ、ダニの死骸や花粉などは、常に空気中を浮遊しているわけではない。どちらかといえば、じゅうたんの上や家具の隙間などにたまりやすいため、空気清浄機よりも小まめに掃除したほうが効果的だとされている。

 今回問題となったシャープの掃除機は、「掃除と一緒にイオンを放出して、同時にアレルギー物質をやっつけてしまえばいい」という観点で、商品企画されたのかもしれない。しかし、イオンの効果が確認できるとしても、それはイオンの届く限られた範囲のこと。加えて、掃除機なんて1日のうちに稼働している時間は長くなく、そんな短い時間にイオンを発生させてもそれほど効果がない。

●日本で独自に進化したマイナスイオン家電

 シャープに限らず、イオン発生機能を搭載した電化製品はいくつも出ている。もともと空中のホコリを帯電させて吸着する空気清浄機等の空調機器は昔から存在していたが、イオン式が急増したのは1990年代後半からの「マイナスイオン」ブームの頃だった。

 最初は滝周辺の大気中に存在する「マイナスに帯電したイオン」が「健康にいい」という話が出てきた。さらにはトルマリンなどの鉱物からも「マイナスイオン」は発生すると言われるようになる。すぐさま「いったい何のイオンなのか?」「どのような効果をもたらすのか?」などの疑問が研究者たちから投げかけられたものの、テレビや雑誌などのメディアを通じて、お茶の間へ広まっていった。

 このブームに乗るかたちで、大小の家電メーカーは「マイナスイオン」の名をつけた電化製品を発売するようになる。空気清浄機やエアコン、それにヘアドライヤーは、瞬く間に「マイナスイオン機能搭載」が標準装備となった。

 さらに冷蔵庫などにはもちろん、2002年には日立のパソコン「プリウス」にもマイナスイオン発生機が搭載されるなど、関連商品は激増。日経新聞の「ヒット商品番付」でも、同年上半期の小結に「マイナスイオン家電」がランキングされるほどだった。

 ただし、このブームは日本国内だけのものでしかない。「大気イオン」による健康効果などの古い研究やイオン式空気清浄機はあるものの、日本のような、「とにかくイオンを出しておけば健康にいい」という現象は起きてはいないのだ。いわば、日本国内だけで独自に進化した「ガラパゴス家電」と言っていいだろう。

 むしろ、イオン式空気清浄機は、欧米ではオゾンを発生するものとして規制の対象になることもある。アメリカではシャーパー・イメージ社のイオン式空気清浄機「イオニック・ブリーズ」がベストセラー商品となったが、生活情報誌「コンシューマー・レポート」がイオンに効果がない上、有害なオゾンを発生させると報じたことで売れ行きも激減、08年に倒産するという騒動も起こった。

 このことを考えれば、オゾンの発生を抑えることは世界的な標準となるだろうが、日本では低濃度とはいえオゾンを発生させる機器をあちこちの家電製品に組み込み、家じゅうをオゾンだらけにしてしまいそうな勢いで増やしているのだ。これは明らかに、日本独自の進化=ガラパゴス化と言っていいだろう。

●新型インフル騒動で、イオン系電化製品が次々登場

BusinessJournal編集部

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