名所も食も揃っている滋賀
滋賀県の観光コンテンツで誰もが真っ先に思い浮かべるのは、なんといっても琵琶湖だろう。実際、滋賀県観光関連団体では琵琶湖を全面的に押し出して観光客誘致を図っている。しかし、関西に馴染みがないと「琵琶湖=大きな湖」といったイメージぐらいしか湧かない。琵琶湖では、釣りや水上スキー、ホバーボードといったマリンスポーツが盛んにおこなわれており、夏季には海水浴場(湖のため、水泳場と呼ばれる)もあちこちにオープンする。
「琵琶湖のほかにも、滋賀県には彦根・長浜・近江八幡といった歴史ある街が点在しているし、焼き物の里・信楽も愛好者が頻繁に足を運ぶスポット。延暦寺で有名な比叡山、紫式部が源氏物語を起草した石山寺といった名所もあります。また、観光に欠かせない“食”に目を転じても、滋賀県は中世から農閑期には能登半島から出稼ぎに来る杜氏集団を束ねる“大津屋”が組織されていた歴史もあって、日本酒づくりが盛んな地で銘酒もたくさんある。神戸牛や松阪牛と並ぶ近江牛という最高ランクの牛もある。名所も食も揃っているのに、いまいち観光面でのPRが弱く、メジャーになり切れていないのです」(同)
滋賀県の観光が霞んでしまう理由は、京都の存在が大きい。世界でも屈指の歴史的建造物が残る京都は、修学旅行の定番。一年を通して国内・海外から観光客も多く溢れ、在住者よりも観光客のほうが多いといわれるほどだ。そんな京都から滋賀県都・大津までは電車で10分。好立地と言えば聞こえはいいが、逆に言えば滋賀県は京都に食われている状態なのだ。
しかし、「知名度は劣っても、数字的な面で負けていない」と滋賀県の観光関係者は力説する。
「関西地方では、なによりも京都の観光客数は圧倒的です。また、今日は大阪の観光客数も急増しています。京都・大阪の2強には勝てませんが、平成28年の観光庁の宿泊旅行統計調査によると滋賀県には年間467万人が宿泊しています。これは、南紀白浜といった温泉リゾートを抱える和歌山県の444万人、寺社仏閣の点在する古都・奈良県の244万人を上回る数字です。実は、滋賀県は“眠れる観光大国”なのです」(同)
滋賀府民
滋賀県の観光を盛り上げたいと考える観光関係者たちがいる一方で、冷ややかな声もある。前述したように、滋賀県は京都市からも近く、大阪市へも電車で1時間。こうした交通の便のよさから、近年は滋賀県に住みながら京都や大阪に通勤する“滋賀府民”が急増しているのだ。