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特に、東海道本線の沿線は滋賀府民がたくさん住んでいるといわれる。そうした滋賀府民の急増を如実に表しているのが草津市だ。草津市の玄関口となる草津駅前は発展著しく、さらに2007(平成19)年に新規開業した南草津駅前は開業当初から大規模開発が進められていた。そして、いまや南草津駅前にはタワーマンションが林立している。駅前に突如として現れた摩天楼のような光景は異様にも映るが、それらは滋賀県経済が好調であることの証でもある。
観光振興という手探りの経済政策に傾斜するよりも、ベッドタウン化を推進して滋賀府民を取り込むことに専念したほうがいいと滋賀県職員は話す。
「滋賀県は京都のように観光客が押し掛けることはありませんし、大阪のように商業施設が集積して買い物客が溢れることもありません。それが、静かな住環境ということで住民から好評を得ています。また、自然が多く残っているので、小さな子供のいる20~40代夫婦が多く引っ越してくるようになっています。だから、わざわざ観光客を増やさなくてもいいのではないかといった意見は根強くあります」
滋賀県が観光振興を積極的に推進しない理由は、ほかにもある。滋賀県内にはパナソニックやSANYO、東レ、オムロン、旭化成、日本コカ・コーラ、積水化学工業といった名だたる大手企業の工場が多数ある。また、これらの関連企業の工場をはじめ研究機関なども集積している。そのため、県内の雇用は常に安定している。大学進学で京都や大阪に出ていった若者が、Uターンで戻ってくることも珍しくない。そのため、滋賀県は地方都市で顕著になっている少子高齢化や人口減少とも縁が遠い。
そうした事情もあって、滋賀県は“外貨獲得”に消極的なのだ。優良な観光コンテンツを抱えながら、あまりPRをしない。そこには、好調な経済と人口増加を観光客によって阻害されたくないといった、相反した思惑も見え隠れする。
“眠れる観光大国”のジレンマは続く。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)
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