ユニクロ株価高騰で、柳井社長は資産3兆円!? ヒートテックを超える新兵器「エアリズム」とは?
国内でかつてのような成長力を失い、踊り場に差しかかっていたユニクロに成長エンジンが点火した。ユニクロが再び独走できるかどうかは、エアリズムが大ヒットするかどうかにかかっている。
ファーストリテイリングが運営するカジュアル衣料、ユニクロは、春夏用の機能性肌着のブランド名を「空気のように軽く、着ていることを忘れる」というコンセプトを込めて「エアリズム」に一本化した。従来の男性向け「シルキードライ」と女性向け「サラファイン」の2ブランドを統一し、この春から本格的に世界展開を始めた。2013年の販売目標は前年比56%増の5300万枚。秋冬用の「ヒートテック」と並ぶ主力ブランドに育てるという。
柳井正会長兼社長は3月19日の説明会で「日本の繊維メーカーの技術は世界最高。日本のサービス業の技術も世界最高。これ(エアリズム)は、日本だからできた。日本発のグローバルブランドとして世界中で売りたい」と意気込みを語った。
エアリズムは繊維メーカーの東レ、旭化成との共同開発。速乾性、防臭機能、なめらかな肌触りなどが持ち味。柳井会長は「今までの肌着の概念を変える」と述べ、夏に肌着を着る習慣のない欧米などでも販売する方針を示した。
エアリズム(シルキードライ、サラファインを含む)の07年以来の累計販売枚数は、8800万枚。12年の販売枚数が3400万枚と好調だったため、13年は56%増の5300万枚に引き上げた。一方、ヒートテックは03年の発売以来、昨年までの累計販売枚数が3億枚と、世界的なヒット商品となっている。
98~00年に防寒衣料フリース、08~10年に機能性肌着ヒートテックという超弩級のヒット商品を生み出した。だが、ヒートテックが誰でもどこでも着ている状態になったため既存店の売り上げが減少に転じた。再び、成長軌道に戻す“3本目の矢”として放ったのがエアリズムなのである。
ヒートテックが寒いシーズンに限定されているのに対して、エアリズムは年間を通して幅広いユーザーにアピールできる。ヒートテックを超えるヒット商品になる可能性は十分にある。
ファーストリテイが4月2日に発表した、3月の国内のユニクロの既存店売上高は前年比23.1%増だった。気温が高い日が続き、ボトムス(パンツなど)やエアリズムなどの春物商品の販売が好調だったという。客単価は同5.4%減だったが、客数が同30.0%増と大きく伸びた。
エアリズムのCMにはテニス世界ランキング1位でセルビア出身のノバク・ジョコビッチと、ロシアのバレリーナのポリーナ・セミオノワを起用した。「ラクな私が、いちばんカッコイイ」をコンセプトにしたレギンスパンツのCMも大量に流した。こうした販売促進キャンペーンが当たり、集客効果が高まった。
3月の既存店は09年10月の35.7%増以来、3年5カ月ぶりの高い伸び率となった。これが好感されてファーストリテイ株が買われた。
4月3日の株価は一時、前日比14%高の3万5800円に上昇。97年4月の東証上場以来の最高値(株式分割考慮後)を更新した。その勢いは止まらず、4月5日には3万8350円の史上最高値へと駆け上がった。