今年2月22日に発売されるや否や注目を浴び、通販サイトでは入手困難になるほどの売れ行きを見せる“完全栄養食品”がある。ベースフードが開発した「BASE PASTA(ベースパスタ)」だ。
1食分で650円(5食以上の購入で1食分550円<税込み>)と、一般的なパスタと比較して割高ではあるが、発売から4日間で約2500食が売れ、一時は販売休止になった。
このベースパスタの特徴は、厚生労働省が定める1食に必要な栄養素31種がすべて含まれているという点だ。つまり、理論的にはベースパスタだけを食べていれば1日分の栄養を補うことができる――そんな画期的ともいえる食品なのである。
また、同じ重量の生パスタと比べて糖質50%オフという点も、「ロカボ」や「トクホ」といったワードが賑わう昨今の消費者にとってはありがたい。
そんな“現代人の健康の救世主”ともいえる食品を開発したのが、ベースフード代表取締役の橋本舜氏だ。現在28歳の橋本氏は、前職ではディー・エヌ・エーで自動運転に携わっており、ITから食品ベンチャーを起業するという異色の経歴の持ち主だ。ベースパスタ開発の狙いと今後の事業展開について、橋本氏に話を聞いた。
食事だけは、知識がなければ補えない
――前職とはだいぶ異なる分野にも思えますが、現在の道に進むきっかけはなんだったのですか?
橋本舜氏(以下、橋本) ディー・エヌ・エーでは、自動運転技術が搭載されたバスやタクシーに関する事業をしていました。地方の限界集落では、人員削減のために運転手を雇うことが困難になり、路線バスが廃線になることも珍しくありません。そういった現状を改善したいと考えていたのです。
取り組みを進めるなかで、地域住民とのコミュニケーションを通じて感じたのは、バスやタクシーの利用目的は「移動すること」よりも、あくまで「健康を維持すること」だということです。たとえば、病院に通うことで入院や寝たきりを回避することができるし、人との関わりを維持することにもつながります。そこで、あらためて「健康寿命」の大切さを痛感したことがきっかけでした。
――そこで、「食」に注目した理由とは?
橋本 健康的な体づくりの基本は「睡眠」「運動」「食事」です。時間さえつくれれば、睡眠と運動はこなすことができますが、食事はどうでしょう。たとえば、「1時間あげるから、必要な栄養をとってきなさい」なんて言われても、どんな成分をどれぐらい摂取すればいいのかわかりません。食事だけは知識がないと補えないことに気づき、そこを深く追求することで「健康寿命を延ばすことに貢献できるのでは?」と考えました。
――なぜ、「パスタ」だったのでしょうか?
橋本 完全栄養食品の「ソイレント」というドリンクの存在を知り、「これさえ飲んでいれば、ほかの食べ物を摂取する必要はない」というスタンスに感銘を受けたのです。とはいえ、食事をドリンクで済ませるという点には疑問を感じました。