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コカ・コーラBJH、“自販機不況”で人員削減…過酷な重労働の配送ドライバー不足が深刻

文=編集部
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コカ・コーラ(サイト「Amazon」より)

 コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス(コカBJH)は社員全体の約5%に当たる約900人の早期退職を募集している。グループの従業員は約1万7000人。営業部門や間接部門を中心に12月末まで実施。退職加算金や再就職支援費用として76億円を計上する。

 2017年4月、東西のボトラー(瓶詰会社)であるコカ・コーライーストジャパンとコカ・コーラウエストが統合して設立された持株会社。統合前の13~14年にそれぞれ300~600人規模の希望退職を募集。統合後の19年4月にも700人の希望退職を募り、950人の応募があった。自販機に商品を詰めるドライバーの不足などで人件費が高止まりしているため、人員の削減で経営の効率化を進めている。

 19年12月期の連結決算(国際会計基準)は最終損益が579億円の赤字(前の期は101億円の黒字)だった。ボトラー再編で発生したのれん代の全額を1~6月期に減損損失として計上したことが響いた。希望退職募集で人件費を圧縮するなどコストの削減を図ったが、夏の長雨の影響で販売が振るわなかった。

 20年12月期通期の業績予想は売上高が1%増の9272億円、最終損益は90億円の黒字転換を計画。東京五輪向けに販売・供給体制を強化するほか、缶酎ハイ「檸檬堂(れもんどう)」に力を入れるとした。

 しかし、今年に入り新型コロナウイルスの感染拡大で東京五輪は中止。自販機の需要が落ち込むなど経営環境は一段と厳しくなっている。人件費を再び圧縮して立て直しをはかるべく、前年に続き希望退職の募集に踏み切った。期初に発表した20年12月期の業績予想を取り下げ「未定」とした。

20年12月期の最終損益は70億円の赤字

 11月12日に発表した20年1~9月期の連結決算は、売上高にあたる売上収益が前年同期比11.2%減の6167億円、本業のもうけに相当する事業利益は59.3%減の69億円、最終損益は46億円の赤字(前年同期は556億円の赤字)となった。前年同期の、のれん代の減損損失がなくなり最終損益の赤字幅は縮小したが、業績の悪化に歯止めはかかっていない。

 四半期ごとの決算では、7~9月期の最終損益は前年同期比79.6%減の18億円。コロナ禍による外出自粛に伴う清涼飲料の苦戦で4~6月期は7億円の赤字だったが、その後はやや持ち直して黒字を維持した。それでも20年12月期の売上収益は前期比10.4%減の8197億円、事業利益は0(前期は150億円の黒字)、最終損益は70億円の赤字(同579億円の赤字)となる見通し。

自販機向け販売数量が14%減

 2ケタの減収を見込む背景には、新型コロナで厳しさを増す経営環境がある。飲料総研(東京・新宿区)によると、1~9月の清涼飲料の出荷数量は前年同期比6%減となった。新型コロナの感染拡大が本格化した3月以降、外出自粛などの影響で自販機とコンビニエンスストア向けが前年実績を下回っている。

 特にコカBJHは自販機の売り上げ比率が高く、打撃が大きい。同社の自販機保有台数は業界トップで約77万台。国内の自販機市場全体の3割を占める。業界2位のサントリー食品インターナショナルは約40万台、同3位のアサヒ飲料は約28万台であり、2、3位を合算した台数よりコカBJHのほうが多い。19年のコカ・コーラの国内売り上げに占める自販機比率は35%と業界のなかで一番高い(いずれも飲料総研の数字。設置台数は19年末時点)。

 コカBJHは定価販売できる自販機を積極的に活用してきた。自販機はメーカー側が価格や商品構成を決めるため利益率は高くなる。各社の飲料事業の営業利益の6~7割を自販機による売り上げが占めるとの試算もあるほどだ。安売りが常態化するスーパーなどと違って、定価で売ることができる自販機はおいしい商売なのである。自販機の販売数量が減れば、業績はすぐに悪化する。コカBJHは自販機の運営オペレーションも自社グループでほぼまかなっているため、販売減が収益に与える影響はよりストレートになる。

 20年1~9月の自販機向け販売数量は前年同期比14%減となった。1ケース(350ml缶×24本換算)当たりで50円の減収となる計算だ。チャネル別での下落率で自販機が最も大きかった。

 一方、販売数量はスーパーマーケット向けが1%減(同38円減)、コンビニエンスストア向けが12%減(同13円減)。ドラッグストア・量販店向けが7%増えたのと明暗を分けた。ただし、ドラッグストア・量販店向けは価格競争が激しく、同33円減となっており儲かってはいないのが実情だ。

 コカBJHはオフィスビルやパチンコ店といった娯楽施設など、天候で売れ行きが左右されにくい屋内に自販機の6割を設置している。これがコロナ禍で裏目に出てしまった。というのはテレワークの広がりでオフィスでの自販機需要は激減。営業自粛が広がったため娯楽施設でも苦戦した。

 コカBJHは、20年12月期は復活の年になるはずだった。コカBJHの筆頭株主(持ち株比率13.55%)の日本コカ・コーラは20年東京五輪の最上位スポンサー「ワールドワイドパートナー」。大会関連の販売増に期待したが、五輪の延期で目算が狂った。これに新型コロナによる外出自粛が追い打ちをかけた。

 コカBJHの販売数量のチャネル別割合は、自販機は24%でスーパーの26%と肩を並べる。飲料総研のデータによると、国内の飲料市場は2010年から2019年に約10%拡大した。対照的に自販機による販売数量は約15%減った。自販機に商品を補充する作業は重労働で長時間労働が一般的。従事する人の定着率が低く、人手不足から人件費が上昇を続けた。コスト増が利益を圧迫することから多くの飲料メーカーは採算の悪い自販機を撤去し、台数を追わない戦略へ舵を切った。

 こうしたなかでコカBJHは自販機事業の改革を打ち出した。ルート数を20%削減、固定費を10%削減(通年ベース)。人出が回復した時点での利益成長を目指す、としている。とはいっても、コロナ禍が、さらに長期化すれば、さらなるコスト削減が必要になりそうなことは目に見えている。

(文=編集部)

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