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有馬賢治「日本を読み解くマーケティング・パースペクティブ」

再起が絶望的ともいわれたマックは、なぜ奇跡的な復活を遂げた?カギは掃除道具?

解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=A4studio

地道な「PDCAサイクル」がマックの勝因

「代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)のサラ・カサノバ氏は、自ら全国47都道府県の店舗を訪れて352人の母親と話し合う『タウンミーティングwithママ』を行っていました。これは母親の意見を積極的に取り入れることで、ファミリー層に向けてのサービスの課題を洗い出そうという意思を感じる企画でした。一時、野菜をたっぷり使ったスープメニューを導入したのも、そういった背景があったのでしょう。トップ自ら率先垂範することで、ブランドを『顧客目線』で運営するという方針が堅固に実施されたわけです」(同氏)

 また、「1955スモーキーアメリカ」「三角ももクリームパイ」などの期間限定商品の充実や、「ポケモンGO」とコラボして全店の「ジム」「ポケストップ」化を実施。さらに「マクドナルドFREE Wi-Fi」導入店では、Netflix配信映画の無料視聴サービスも開始した。このような店舗の魅力アピールはあくまでもマイナスイメージを払拭してから行うべきであり、ビジネスリカバリーにおいては、この順序が大事だと有馬氏は言う。マックもその順序を間違えなったことが功を奏したようだ。

「これら一連の施策は、計画・実行・評価・改善を逐次続けながら徐々にかたちに現れていくもので、一気に実行・完結できるものではありません。会社存亡の危機に直面したマックでしたが、大量の広告に頼るなどの小手先の対応ではなく、地道に『PDCAサイクル』を回した結果が最近になって表れてきたといえるのではないでしょうか」(同氏)

 経営危機に瀕すると、一発逆転を狙ってしまう経営者は少なくない。しかし、しっかりと信頼を回復するには、ある程度の期間が必要であり、たとえすぐに成果が数字に表れてこなくても、方針を変えずに遂行するトップのぶれないビジョンが求められる。マックの復調は、そのことを改めて示しているのだろう。
(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=A4studio)

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