東芝の迷走が止まらない。いや、出口の見えないトンネルに入ってしまったといえるかもしれない。
金融商品取引法で定められ、上場企業の義務といえる2017年3月期決算の有価証券報告書の提出が、法定期限内の6月末までにできないことが確実となり、今月28日の定時株主総会で決算報告ができないという前代未聞の状況にある。もはや、株式会社とはいえない。
これを受けたかのように、議決権行使アドバイスを行う米グラス・ルイス社が一部株主に、東芝側が定時総会で提案する綱川智社長ら9人の取締役再任案に対して反対するよう助言したもよう。このようなアドバイスはかなり異例である。現行の取締役会は適切に機能していないという強い認識があるのだろう。
決算報告ができないのは、監査法人から決算に対する「適正意見」を得られないからである。有価証券報告書の提出の延期は、15年4月の不正会計発覚以来5度目と、ほとんど常態化している。昨年のシャープ同様に8月1日付で東証2部に陥落することは決定済みである。東芝にとって2部陥落ですらかなりの屈辱だろうが、このまま監査法人から「適正意見」が得られず有価証券報告書の提出が法定期限を超えて大幅にずれ込み、来年18年3月末時点で債務超過となれば、東芝は間違いなく上場廃止となる。
5月15日に東芝が発表した17年3月期の連結業績見通しでは、当期損益は9500億円の赤字、前期は4600億円の赤字、前々期は380億円の赤字なので、3期続けての赤字となる。さらに、17年3月末時点で債務超過(負債が資産を上回るので、資本がマイナスの状態)が5400億円に上るという危機的な状況にある。当初、東芝は「決算短信」のかたちで公表する予定だったが、監査法人との合意が得られず、東芝独自の試算値である業績見通しのかたちで公表するという、これまた異例の事態となった。
巨額の赤字を抱えていることは確実で、まずはその額を確定しなければいけない東芝としては、今回の巨額赤字の元凶ともいえる米国子会社ウエスチング・ハウス(WH)の赤字を止めるため、米国で同社の破産法申請を行うという大きな賭けに出た。再建計画は7月下旬に固まる予定だが、原子力発電所建設は州や米国政府も巻き込んでいる事業であり、東芝の道義的責任も問われるので、すんなりと東芝の思惑通りに赤字を止めることができるのかは不透明である。