東京電力ホールディングスの川村隆会長の就任後初のインタビューでの発言が“炎上”している。福島第一原子力発電所で高濃度汚染水を浄化した後に残る放射性物質トリチウムを含んだ処理水を、海洋に放出すると川村会長が明言したと共同通信が報じたからだ。しかし、報道をめぐっては同じメディア関係者からも懐疑的な見方が多く、今後さらに紆余曲折の展開が予想されている。
「もう、火消しに必死ですよ」と語るのは東電関係者だ。問題になったのは、14日の共同通信の配信記事。「川村隆会長が13日までに報道各社のインタビューで『(東電として)判断はもうしている』と述べ、海に放出する方針を明言した」と報じ、複数の地方紙に掲載された。
東電の経営層が海洋放出を明言したのはこれが初めてで、風評被害を懸念する地元の漁業関係者から猛反発を浴びた。東電は即座に「トリチウム水の海洋放出時の影響に関し、科学的・技術的な見地に基づく現行の規制・基準に照らし問題ないという、原子力規制委員会田中委員長他のご見解と同様であると申し上げたものです。よって、最終的な方針を述べたものではありません」とのリリースを出した。しかし、騒ぎは収まらず、川村会長は全国漁業協同組合連合会に19日に呼び出され、抗議を受けた。
さらに規制委員会の田中委員長も同日の会見で、「私を口実にするのは、事故の当事者として私が求めていた(地元と)向き合う姿勢とは違う。(このままでは)この問題は解決しない」「はらわたが煮えくり返る」と述べ、もはや孤立無援の状態だ。
川村会長が実際に汚染水の海への放出を関係者の根回しもなく公言したならば、集中砲火を浴びても仕方ない側面もあるが、電力関係者は「今回の報道で気になるのは共同通信一社が報じたこと」と指摘する。
なぜ共同通信一社のみなのか
ある経済部記者は語る。
「今回は5社程度のグループインタビュー形式で、時間は30分程度で何グループかに分けて実施したと聞いている。トリチウム水の扱いについては、インタビュー時間の少し前に川村会長が規制委員会の田中委員長に詰問されていた。つまり、各メディアにとって最大の関心事。もし、川村会長が海への放出を決断したとしゃべったら、共同通信と同じグループだった社も一斉に報じているでしょう。