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小林敦志「自動車大激変!」

アルファードもRAV4もカローラもよく売れる…トヨタ“一人勝ち”だった2020年の新車販売事情

文=小林敦志/フリー編集記者
アルファードもRAV4もカローラもよく売れる…トヨタ一人勝ちだった2020年の新車販売事情の画像1
トヨタ アルファード | トヨタ自動車WEBサイト」より

 自販連(日本自動車販売協会連合会)から、2020年12月単月の登録車新車販売台数が発表された。それと同時に、2020暦年(2020年1月から12月)での通称名別(車名別)年間新車販売台数ランキングも発表されている。

 通称名別(車名別)の年間販売台数ランキングを見ると、トップ10中7台がトヨタ自動車のクルマで、さらに1位から3位までをトヨタ車が占めた。まさに、2020年は“トヨタ一人勝ち”といっていいことを物語るランキングとなっている。

 台数の多さでいえば、軽自動車も含むトータルの年間販売ランキングで1位となったホンダ「N-BOX」の方が19万5984台とインパクトが大きいが、トヨタの“一人勝ち”は、単に「新車がよく売れた」というだけではない。その中身も注目に値するのである。

アルファードが販売好調の理由

 以下のグラフは、販売台数が多いトヨタ車の中から特に注目に値する車種を抜粋して、2020年の月別販売台数の推移を示したものである。

アルファードもRAV4もカローラもよく売れる…トヨタ一人勝ちだった2020年の新車販売事情の画像2

 まずは「アルファード」に注目してもらいたい。9月以降は、それまでより“一段上”といっていいレベルでグラフが安定している。2020暦年での月販平均台数は7562台だが、9月から12月の4カ月は9650台と、約2000台の上乗せとなっている。

 トヨタは5月に全店舗での全車種併売化を行い、原則どの店でも、一部車種を除くすべてのトヨタ車を購入できるようになった。アルファードも、5月以降はそれまで専売だったトヨペット店に加え、トヨタ店、カローラ店、ネッツ店でも購入できるようになった。販売する店舗が増えたこともあり販売台数は急伸し、お盆休みなどで稼働日が少ない8月にいったん下降したが、9月以降は再び販売台数を戻している。

 ちなみに、「ヴェルファイア」の2020年の月販平均台数は約1500台と、年初から年末まで低空飛行の傾向は変わることがなかった。ゆくゆくはアルファードに一本化されるともいわれているので、すでに生産および販売の集約化を進めていたようである。

 販売現場では、9月あたりから「アルファードを積極的に販売するように、と言われるようになった」という話を聞くようになった。

「アルファードは中古車でも高い人気があり、リセールバリューが良いので、残価設定ローンを組むと残価率が良く、ノア系(ノア、ヴォクシー、エスクァイア)でローンを組んだときの月々支払い額に少し上乗せするだけでアルファードに乗れる(特別仕様車ぐらいなら)とお客に勧めると、かなりの割合でアルファードを契約する」とは現場のセールスマン。

 全店併売化でカローラ店がアルファードの扱いを始めたことも、販売台数急伸に大きく影響しているようだ。「まずはエスティマに乗っておられるお客様へ、アルファードへのお乗り替えを勧めていきました。販売促進する前に、エスティマのお客様からも“待っていました”とばかりにアルファードへ乗り替えるケースも目立ちました」との話も、販売現場で聞いたことがある。

 単に台数が売れるだけでなく、アルファードの購入ではローン、それもフルローンを組むケースがほとんどとのこと。

「500万円あたりをフルローンで組んでもらえると、提携信販会社から弊社へのバックマージンも多額になり、我々現場のセールスマンへのマージンも多くなります。また、バックマージンからの値引き支援も多くなるので、お客様へも値引き拡大ということで還元することができるのです」(前出のセールスマン)

RAV4もカローラもよく売れるトヨタの強み

 人気のSUVでは、暦年で折り返し時期の6月に新型「ハリアー」が発売されたが、通年での月販平均台数は約5505台となっている(新型車販売比率は約85%)。6月から、つまり原則新型だけでの月販平均台数は、目標の3倍強となる約9422台となっている。

 しかも、納期が最もかかるのは、単に受注が集中しているわけでもないが、ハイブリッドのAWDの最上級グレードで有償ボディカラー、本革シートなど、オプションてんこ盛りのモデルとなっている。さらに、キャラクターは異なるが、同クラスSUVとなる「RAV4」の月販平均台数は目標3000台に対し約4570台とよく売れており、ハリアー人気の“煽り”を受けていない。

 アルファードやハリアー、RAV4は、世の中でよく売れているといわれる軽自動車やコンパクトカーに比べて利益率の高い“高収益モデル”となり、そのようなモデルが月販平均で7500台、9400台、4500台とコンスタントに売れていれば、ディーラーやセールスマンもホクホクなのである。

 さらに、トヨタは登録車で2020年に最も売れた「ヤリス」系をはじめ、「ライズ」や「ルーミー」といったコンパクトモデルも大ヒットとなっており、ラインナップに死角がないところも注目に値するといえよう。

 また、「カローラ」系がよく売れているのにも注目してもらいたい。ここ最近、新車に限らず、消費行動の特徴として“真ん中の商品は売れない”と言われている。これは、同じ商品であっても割安感が目立つものか、思い切り豪華で高額なものか、両極のものしか売れないことを表している。

 新車販売でいえば、軽自動車など実用性重視の価格訴求モデルと、アルファードやハリアーなど高級志向の強い高額車両の中間、つまりカローラのようなクルマがなかなか売れないのが特徴となっている。しかし、セダンとステーションワゴンがメインという売りにくいボディタイプで、しかも“中間”に位置するカローラを月販平均で約9856台売ってしまうのも、トヨタ1強を支える大切なポイントといえるだろう。

 つまり、幅広いラインナップや緻密な販売ネットワークだけでなく、新車購入希望者個々の状況をしっかり把握し、“売り分ける”ことができるのもトヨタの強みのひとつとなっている。しかし、今の“トヨタ1強”状態は、ただトヨタが緻密な戦略を練った結果だけともいえないのである。

(文=小林敦志/フリー編集記者)

後編に続く

小林敦志/フリー編集記者

小林敦志/フリー編集記者

1967年北海道生まれ。新車ディーラーのセールスマンを社会人スタートとし、その後新車購入情報誌編集長などを経て2011年よりフリーとなる。

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