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渡辺陽一郎「いちばん詳しい『人気の新車』完全ガイドシリーズ」

新型ノートはコンパクトカー最高峰の乗り心地…オプション装備でライバル車より割高に?

文=渡辺陽一郎/カーライフ・ジャーナリスト
新型ノートはコンパクトカー最高峰の乗り心地…オプション装備でライバル車より割高に?の画像1
日産の「ノート」(「日産:ノート [ NOTE ] 電気自動車 (e-POWER)」より)

どんなクルマなのか?

ノート」は日産自動車のコンパクトカーで、ボディサイズは全長が4045mm、全幅は1695mmです。最近のクルマにしては珍しく、現行型になって全長を55mm、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)も20mm短く抑えました。エンジンは直列3気筒1.2Lのe-POWER(ハイブリッド)のみです。先代型と違ってノーマルエンジンは用意されません。

 開発者は「先代型の売れ行きを見ると、ノート全体の70~75%をe-POWERが占めていました。そこで、新型はe-POWERのみの設定にしています。また、ノーマルエンジンを用意すると価格を安く(160万円前後に)抑える必要があり、内外装をe-POWERのような上質な造りにはできません。つまり、2種類の内外装を用意する必要も生じるので、e-POWERのみとした事情があります」と述べています。

人気を得ている理由

 コンパクトカーは、軽自動車の次に人気の高いカテゴリーです。運転しやすく、最近は走行性能や居住性も向上して、価格は割安に抑えているからです。ノートはトヨタ「ヤリス」やホンダ「フィット」と同様、全長が4m前後のコンパクトカーで、e-POWERを搭載して安全装備も充実させました。しかも2020年11月に発表(納車を伴う発売は12月)された新型車なので、注目度も高いです。

 先代型に比べると内外装の質が高く、走行安定性と乗り心地も進化しました。安全装備の充実も含めて、好調に売れる要素が多いです。また、今の日産ではコンパクトカーの車種が不足しています。「マーチ」は設計が古く、「キューブ」や「ティーダ」は廃止されました。そのために、需要がノートに集中している面もあります。

気になる8つのポイントチェック&星取り採点

(1)居住空間の広さとシートの座り心地

★★★☆☆

 ホイールベースを短くしたので、後席の足元空間が少し狭まりました。シートの座り心地に不満はありません。

(2)荷物の積みやすさとシートアレンジ

★★★☆☆

 荷物の収納性はコンパクトカーの平均水準です。フィットほど広くはないですが、リヤゲートは大きく開きます。

(3)視界や小回り性能など運転のしやすさ

★★★★☆

 全長は4045mmに抑えられ、最小回転半径も4.9mに収まります。ななめ後方の視界は不満ですが、運転しやすいです。

(4)加速力やカーブを曲がるときの安定性

★★★★☆

 e-POWERの動力性能は先代型を上回ります。操舵に対する反応も素直で、峠道なども走りやすいです。

(5)乗り心地と内装の質感などの快適性

★★★★★

 足まわりが柔軟に伸縮します。コンパクトカーとしては最高峰の乗り心地で、内装の質も満足できます。

(6)燃費性能とエコカー減税

★★★★★

 売れ筋になるXのWLTCモード燃費は28.4km/L。コンパクトなハイブリッド車とあって、燃料消費量は少ないです。

(7)安全装備の充実度

★★★★☆

 2台先を走る車両を検知できる衝突被害軽減ブレーキなど、安全装備は高水準です。オプションも充実しています。

(8)価格の割安感

★★★☆☆

 ノートXの価格自体は割安に思えますが、運転支援機能のプロパイロットやLEDヘッドランプはオプション設定です。

選ぶときに確かめたい3つのメリット

・サスペンションが柔軟に動いて、乗り心地は上質です。ノイズも小さいです。

・操舵に対する反応が正確で、安定性と快適性を高い水準で両立させました。

・液晶パネルを多用したインパネは機能性が優れ、質感も高めています。

後悔しないための3つの要チェックポイント

・後席の足元空間は先代型よりも狭く、4名乗車時の快適性も少し低下しました。

・後方視界が良くないので、縦列駐車などを試して運転のしやすさを確認しましょう。

・プロパイロットを含んだセットオプションの価格は44万2200円と高いです。

こんなユーザーにおすすめ

 現行型はe-POWER専用車です。エンジンは発電、駆動はモーターが担当するので瞬発力も高いです。2.5Lのノーマルエンジンを搭載する感覚で運転できます。

 走りは従来以上になめらかです。ノイズも小さく、走行安定性と乗り心地も優れているので、上質な運転感覚を重視するユーザーに適しています。価格が高い代わりに燃費性能も優れているため、走行距離の伸びる使い方に向いています。その一方でノーマルエンジンを廃止したので、価格の安さを重視するユーザーには適しません。

今後のモデルチェンジ予想

 2020年11月に発表されたので、当分の間、大幅な変更は行いません。ただし遠くない将来、買い得な特別仕様車の「プロパイロットエディション」を追加する可能性は高いです。前述の通り、現状では、人気の高い運転支援機能のプロパイロットが複数の装備とセットオプションになり、44万2200円の上乗せになるためです。

 加えて、ヘッドランプも標準装着されるのはハロゲンで、LEDは9万9000円のオプションです。これらのオプション装備をX(218万6800円)に加えると、総額では272万8000円に達します。ライバル車のヤリスハイブリッドやフィットe:HEVと比べた場合、ノートは少なくとも20万円は割高になっています。

 そこで、プロパイロット、LEDヘッドランプ、先進安全装備を採用した上で内容を絞り、価格上昇を抑えたプロパイロットエディションを用意するでしょう。

最近の販売状況と安く買うための商談方法

 日産のコンパクトカーが以前に比べて車種を減らしたこともあり、ノートは今後も好調な売れ行きを保ちます。

 値引きは少ないですが、前述の通り、人気の高いプロパイロットとLEDヘッドランプを加えると、オプション価格の合計額が約54万円に達します。商談するときも、オプションのために予算オーバーになることを述べて、フィットやヤリスを検討していることも明らかにしましょう。オプション価格が54万円では、誰でも他の車種を検討するからです。車両本体の値引きは少額ですが、ディーラーオプションをサービス装着させたり、下取り車の売却額を高めるなど多角的に商談しましょう。

リセールバリュー/数年後に売却するときの価値

 設計の新しいコンパクトカーでe-POWERも採用され、現行型は内外装の質や乗り心地も向上させました。従ってコンパクトカーとしては、数年後の下取り額にも期待が持てます。現時点で購入すれば、数年を経ても、現行ノートは中古車市場に大量には流通していません。そのために3年後の売却額は、新車時の45~50%と好条件です。

これが結論!/このクルマの総合評価&コメント

★★★★☆

 先代型に比べると後席は狭いですが、内外装は上質で、静粛性や乗り心地も優れています。アクセル操作によって、車両の進行方向を調節する奥の深い運転感覚も味わえます。現行ノートは、ルノー「ルーテシア」と共通のプラットフォームを使うこともあり、走りの満足度を高めました。

 グレードは3種類を用意しましたが、F(205万4000円)は燃費に特化しています。燃料タンク容量を4L減らして数値上の軽量化を図り、WLTCモード燃費は29.5km/Lを達成しました。ただし、他のグレードも28.4km/Lですから、Fが特別に優れているわけではありません。存在価値が乏しく、開発者も「売れ行き次第では廃止するかもしれません」と述べています。

 S(202万9500円)は法人やレンタカー向けのグレードです。Fと同様、プロパイロットはオプション設定されていません。そうなると必然的にX(218万6800円)を選ぶことになりますが、前述の通りプロパイロットはオプション価格が高額で、LEDヘッドランプもオプションです。ノートの機能は優れていますが、標準装着される上級装備が少なく、最終的に割高になります。このあたりに注意して選びましょう。
(文=渡辺陽一郎/カーライフ・ジャーナリスト)

渡辺陽一郎/カーライフ・ジャーナリスト

渡辺陽一郎/カーライフ・ジャーナリスト

1961年生まれ。神奈川大学卒業。1985年に自動車雑誌を中心に扱うアポロ出版株式会社に入社。その後、同社で複数の自動車雑誌やアウトドア雑誌を手掛け、1989年に自動車購入ガイド誌「月刊くるま選び」の編集長に。1997年にはアポロ出版株式会社の取締役も兼任。2001年6月に40歳を迎え、同月に「カーライフジャーナリスト」の肩書でフリーランスに転向。

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